人気のロケ地「旧・足利西高校」
とくに、映画『ちはやふる』にも使用された「旧・足利西高校」は人気のロケ地となっている。辺見課長によると「設備の維持費に年間100万円ほどかかっているが、今年度は貸出料金だけで約300万円の収入を見込んでいる」という。最近は漫画原作の「学園もの」の実写化が増えていることもあり、「撮影時期が重なって断るケースも多い」という。
では、ロケ地に選ばれることで、具体的にどのようなメリットがあるのか。足利市は撮影チームの宿泊費などを合算した平成28年度の直接的経済効果を約6700万円と発表しているが、辺見課長は「若い人たちが地元に関心を持ってくれるようになったことも大きい」と語る。これまで足利市のサイトに若者がコメントを寄せることなどなかったが、足利で撮影した映画監督などがSNS に出したコメントやロケ情報を「推進課」が載せると、多くの若者がコメントを寄せるようになった。
「足利もイケてるじゃん」。そう思ってもらえれば、地元に残ってくれる若者も増える。足利の武器のひとつは、「東京からの近さ」にある。新宿で朝6時に集合しても、8時には撮影を開始できる。まさに「地の利」の良さだが、だからこそ若者の多くが東京に出て行ってしまうという問題も発生する。
もう一つの効果として、足利の映画館が昨年復活したことがある。最盛期には町のなかに8軒の映画館があった。2007年にシネコンができたものの、たった1年半で廃館。その後は、町に映画館がない状況が続いていたが、昨年、そのシネコンの建屋を再利用する形で映画館が復活したのだ。
足利で撮影された映画は優先的に上映されるよう働きかけを行っている。足利で撮影が決まると、「推進課」がSNS等でエキストラの募集をかける。FacebookやTwitterのフォロワー数は延べ5千人に達している。エキストラとして映画に参加した市民は、その映画を見たい。だから、映画館に足を運ぶという好循環が起き始めている。
少しずつ「映画」を軸に町が、動きつつある。今後の目標について尋ねると、「足利西高校の中にスタジオを誘致したい。オープンセットを入れたり、その場で編集できる設備も入れたい。そうすれば雇用にもつながる」と辺見課長は語る。