訪日中国人観光客の間で急上昇している関心事といえば「食事」。日本旅行の際、食事は大きな楽しみのひとつだが、中国人はどのようにして日本の飲食店を探し、予約しているのか、考えてみたことがあるだろうか。連載6回目はインバウンド向けのオンラインによる飲食店予約代行サイトを運営する企業、日本美食を紹介する。同社のCEO、董路(ドン・ルー)氏に話を聞いた。
――中国人が日本旅行をする際、予約代行をしてくれるサイトがあるのですね。初めて知りました。
董氏:訪日中国人向けのビジネスで、事業の柱は主に2つです。1つ目は訪日中国人のオンラインでの飲食店の予約代行サービス。2つ目はそれに関連する決済サービスです。これまで、訪日中国人は日本で「ぐるなび」や「食べログ」、「一休.comレストラン」などのサイトで飲食店を予約することができませんでした。彼らは日本の電話番号を持っていませんし、言語の問題もあるからです。そこで、訪日中国人が簡単に予約できるサイトがあったらどんなに便利だろうと思って、このビジネスを思いつきました。
――目からウロコですね。確かにそういうビジネスはこれまでなかったですね。
董氏:実は私自身の経験がヒントになりました。私は日本留学の後、米国留学、コンサルタントなどを経ていったん中国に帰り、その後、2014年に再び日本に戻ってきたのですが、中国から日本旅行にやって来る友人たちから何度も「どこか東京でおいしいレストランを教えて」とか「何を食べたらいいのでしょう?」と質問されました。
私も友人からの問い合わせなので、教えてあげたり、お店に連れていってあげたりしたのですが、私が推薦したお店は友人に大好評で、いつも感謝されました。でも、同時に「日本語がわからないし、おススメ料理もわからないから、董さんがいないと困る」ともいわれました。そこで、自分でおいしいと思う飲食店をリストアップして、中国語で友人に送ってあげたら、これも非常に喜ばれたのです。私はずば抜けたグルメというわけではないのですが、こんなに中国の友人から感謝されるということは、ここにきっとマーケットがあるのではと思い、事業を立ち上げようと思い立ちました。
日本人向けには「ぐるなび」や「食べログ」のような飲食店を紹介するメディアがたくさんありますね。エリア別、料理のジャンル別などで探すことができますし、それ以外にも、さまざまなメディアや友人から評判を耳にすることがあるはずです。でも、中国人を始め外国人は、日本語がわかりませんし、土地勘もありません。日本人なら誰でも知っているような有名レストランの名前を聞いても、それがどの町にあるのか、どんな名物料理があるのかも、さっぱりわかりません。それに、飲食店が無数にあるので、どこでどのように探したら、自分が望んでいるお店に到達できるのかも見当がつかないのです。
一方、日本では人口減少が深刻化しています。人口が減少することにより客単価も減っています。利益の縮小に悩んでいる飲食店が少なくありません。飲食店の情報サイトに掲載するのには経費がかかりますが、小さいお店の場合、この経費負担が少なくありません。このように、訪日中国人の悩みと飲食店の悩み、双方の悩みを解決できる事業として、オンラインの予約サイトという形で橋渡しができたら、と思ったのです。