2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年10月24日

 上記寄稿は、EUの主張を中国にも受け入れ可能なように上手に提起していると言ってよいでしょう。

 中国は「政治」の国であり、すべてが「政治」と結びつくことになります。2013年の「改革の全面的深化に関する決定」、14年の「司法改革に関する決定」は、第18回党大会で決まった路線でした。しかし、その実施は遅れました。というのは、中国国内で「左(保守派、民族派)」の勢いが強まったからです。習近平も軸足をかなり「左」に動かした気配があります。

 第19回党大会の開催を控え、外国紙とはいえ、現職のEU駐中国商工会議所会頭がこのような見解を発表したことは、中国国内にそうして欲しい人たちがいるからに他なりません。末尾の「中国の指導者は何をすべきかをはっきりわかっている。そしてEU商工会議所はそれを支えたいと考えている」という言い方は、意味深長です。習近平への権力集中が、これほど明確になっている状況に照らせば、習近平の意向に沿うと見て良いのでしょう。今年3月には、習近平に近い国家発展改革委員会体制管理研究所が『改革停滞現象』と題する報告書を出版し、改革の遅れを批判したことがあります。改革への流れを作ろうとしていることは十分に考えられます。つまり、党大会後に、習近平は軸足を再調整する可能性が十分あるということです。

 人民解放軍の基本的改革をほぼ成し遂げた現在、習近平第二期政権の最大の課題は経済にあると思われます。その持続的成長の実現が鍵になります。そうなると、「改革の全面的深化に関する決定」の6割は経済に関するものですから、それを実施に移すしか方法はないということになります。

  
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