中東を読み解く

2017年10月18日

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中東の混迷さらに深まる

 ラッカの陥落などISの衰退は本来なら、中東地域の安定に寄与する大きな要因だろう。しかし現実は、地域の混乱と混迷が一段と深まるという逆の結果になりつつある。

 シリアでは、ISの残党勢力が東部デイル・ゾール県を中心に跳梁跋扈する可能性が大きい上、ラッカを制圧したシリア民主軍(SDF)のクルド人勢力と、シリア政府軍が領土の支配をめぐって軍事衝突する懸念が強い。クルド人は昨年3月、内戦の混乱に乗じて北部3県で一方的に連邦制の施行を宣言したが、これにはアサド政権が強く反発した。

 アサド政権軍は現在、南方からラッカに向けて進撃しつつあり、このほど、ラッカに代わるISの新首都と伝えられたユーフラテス川沿いのマヤディーンを制圧した。アサド政権はラッカを支配下に置いて、シリア全土の奪還を目指す姿勢を内外に示したい意向だ。しかし、クルド人が多大な血を流して獲得したラッカを容易に手放すことはないだろう。

 このクルド人の勢力拡大を阻止しようと動いているのがトルコだ。トルコはシリアのクルド人と自国の反政府クルド人組織が連携していると危機感を深め、シリアに軍事介入した。シリアのクルド人の支配地がこれ以上拡大しないよう全力を挙げる構えで、両者に不穏な空気が漂っている。

 アサド政権を支援しているロシアとイランが今後とも軍事介入を続けるのか、何よりもシリアの内戦には関心がないとしてきたトランプ米大統領がIS壊滅後にシリアから手を引くのか、引かないのか。不確定要素があまりに多い。

 ISが掃討されつつあるイラクでも、北部の油田地帯キルクークをめぐって政府軍とクルド人武装組織が交戦するなど緊張が高まっている。ISの崩壊に伴って中東地域の液状化はさらに広がろうとしている。
 

  
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