2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2017年10月3日

 米西部ネバダ州ラスベガスで59人が死亡、約530人が負傷する米史上最悪の銃撃事件が発生した。容疑者は白人のスティーブン・パドック(64)で、犯行後に自殺しているのが見つかった。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出したが、連邦捜査局(FBI)は関連を否定、動機は不明だ。犯人の素顔に迫った。

銃撃場所となったホテル(REUTERS/AFLO)

ISが執拗に犯行声明

 犯行現場になったのは、ギャンブル都市ラスベガスの目抜き通り「ストリップ」に近接したコンサート会場だ。パドックは1日午後10時過ぎ、会場を見下ろす高級ホテル「マンダレイ・ベイ・リゾート・アンド・カジノ」32階の宿泊部屋からコンサート会場で行われていたカントリーミュージックの音楽祭にライフルを乱射した。

 会場には当時、2万人を超える観客がいたが、次々に凶弾に倒れていった。警察がパドックの潜んでいた部屋に突入した午前零時前には、すでにパドックは自殺していた。部屋からは銃火器17丁が見つかった。パドックは部屋の窓ガラスをハンマーで割り、ここから銃撃した。使用した銃はAK47自動ライフル。

 捜査当局は当初、共犯者として同居していたと見られる62歳のガールフレンドM・Dの行方を追っていた。しかし、その後、彼女は国外に出国していたことが分かり、事件とは直接関係ないとされている。地元警察によると、M・Dは現在、東京に滞在しているようだ、という。

 犯行後、間もなくIS系の「マナーク通信」が「ISの戦士が実行した。戦士は数ヶ月前にイスラム教に改宗した」との犯行声明を出した。ISはその後も新たな声明を出し、戦士が指導者バグダディの「十字軍の連合国を狙えという呼び掛けに応じた」と再び主張した。

 ISはテロ事件と関わりがなくても、自分たちの犯行とするケースもあるが、今回は短時間のうちに執拗に犯行を主張しており、犯人との関係に相当自信を持っているのかもしれない。フィリピンで6月、カジノでの乱射、放火で、37人が死亡した事件が発生した時も、ISは犯人をISの戦士として犯行声明を出している。この事件はギャンブルの借金が犯行の動機だった。

 ラスベガスの事件の前、米国で最大の銃撃事件は昨年6月、フロリダ州オーランドのナイトクラブで起きた49人殺害事件だった。この時はISの過激思想が引き金になった「一匹オオカミ型テロ」だったが、今回の事件の被害者はそれをはるかに上回る史上最悪のテロとなった。

 問題は動機だ。その解明は今後の捜査に任せなければならないが、ギャンブルによる借金やトラブルが原因なのか、それともISの過激思想に共鳴した犯行なのか、全く不明だ。ワシントン・ポストなど米メディアの報道からは、引退して余生を「ギャンブラー」として過ごす「引きこもり男」の素顔が浮かび上がってくる。


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