未来につながる情報開示を
――1つ思うのは、子育てをしている人とそうでない人で、「PTA」に関して持つイメージが全然違うということです。最近ではPTAの仕事をどんな風に効率よくするかとか、どう楽しむかという本が出ていて改革が進んでいる印象です。一方で実際の現場を知らない人は「怖いことを言うおばさんたちの集団」というイメージを未だに持っている。
杉江:ギャップはすごくあると思います。明らかに間違っているようなイメージがネットで広まるのだとしたらちょっと変えた方がいいと思うんですけど、一方で、PTA自体が自分たちの性質をきちんと説明したり情報開示をしたりしてこなかった。その自業自得の面もあると思います。
――確かにわかりづらいし、知る機会もなかなかないですね。
杉江:強制参加ではないんですよとか、たとえばPTA協議会(または連合会)に加盟していないPTAも存在することとか、そもそも何のためにやっているのかとか。そういうのを言わないで、「都の健全育成条例に協力します」とかいきなり言う。都下の全PTAが協力しているように見えるけれど、そうではないのに、その情報開示がうまくいっていない。それは良くないところだと思います。
いつでもやめられる組織に
――その後お子さんが中学生になってから、中学校のPTAは1年でやめたということも書いてあります。
杉江:会員ではいたんですが、ここにいるとストレス溜まると思って出席しなくなりました。校風が合わなかったんです。
――その判断がすごくいいなと思いました。自分がツラいことはやめちゃっていいよ、という。
杉江:子どもにも言いましたね。「父ちゃんPTAは行かないから。なんか言われたら病気で家にいるって言っといて」って。
――お子さんはなんて?
杉江:「なるほど」って言ってましたね。
――ツラいならやめてもいいのに、やめられないことって結構あると思います。やめちゃいけないルールはないのに、空気を読んでやめられない……っていう。
杉江:「やめてもいいよ」って言ってくれる人がPTAによっていない可能性もありますよね。やめたいときにどこに相談していいかわからないっていうこと。本当は相談窓口が2つあって、ひとつは校長先生と副校長先生。PTA(Parent-Teacher Association)のTのトップの管理職なので相談していいんです。
――もう一つは。
杉江:Pの側のトップの会長とか。相談された側も「そんなに大変なら何とかしますからおやすみになってくださいよ」って言う。その機能があることは意識された方がいいと関います。会長って名がつく人がいるんだから、率先してやめさせてあげるべきだと思います。
――その意識が今はまだあまりない?
杉江:そうですね。得るものがなくなったと思ったら、すーっとやめる。やめさせてあげる。それでいいと思うんですけどね。
子どものそばにいる手段の一つとして
――ウェッジは男性読者が多いのですが、イクメンが増えたとはいえ、まだ子育てのメインは妻というお父さんも多いと思います。そんなお父さんたちに伝えたいことってありますか?
杉江:子どもが何人いらっしゃっても、その子の3歳だったり5歳だったりっていうのは1度しかないですよね。仕事は忙しいと思いますけど、その年の思い出って機会を作るようにしないとなくなってしまいます。何を優先するかは個人の自由だけど、子どもが大きくなってから後悔するぐらいだった積極的に機会を捕まえて入っていくといいと思います。
――子育ての中でもPTAとなると敷居が高く感じる人は多そうです。
杉江:一回だけ行って「女性ばっかりだったよ」って言う人もいるんですけど、それはいつも行かないから入りづらく感じるのであって。足を向ける突破口を持っておかないと、いざ行きたいときに入れなくなってしまうし、お客さんになってしまいます。だから機会を捕まえて入った方がいいと思います。PTAでなくても、少年サッカー団でも、学童保育の集まりでも。子どものそばにいる手段を見つけないと損だという気がしますよ。
・組織の価値観が「ふわふわ」してると思ったら目標を立てよう
・頑張りたければ頑張ればいいし、やめたいときはやめればいい
・PTAは子どものそばにいる手段の一つでもある
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