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2017年10月24日

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小川たまか (おがわ・たまか)

フリーライター

1980年東京生まれ。教育、働き方、性暴力などを取材。『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(2018年/タバブックス)。Yahoo!個人「小川たまかのたまたま生きてる」(https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/)などで執筆。Twitter:@ogawatam

目標は「もめないこと」

――PTAという言葉からは堅苦しい決まりがあるイメージが先行しますが、価値観の面ではむしろふわふわしていた?

杉江:そうですね。たとえば会社の営業部だと売り上げ達成目標があって、それが見えるので、それができれば大体のことがOK。ところがPTAは「ゼロになること」が目標なんですよね。

――毎年滞りなく決まったことをするための組織?

杉江:マイナスにならないようにして原状回復して翌年に返すような。達成感がない。だから達成感をつくるために何だろうなと思ったら、仲良くなるじゃないですけれど、もめごとを起こさないようにすることしかないなっていうのがありましたね。

――案外大変な目標である気もします。

杉江:自分たちが協力し合う体制をつくることが大事っていうのを、(PTA会長になって1年目に)言葉を変えて言い続けたんですね。もし自分がカチンとくることがあっても、価値観が違うから言うべきではないとか、ここでこれを言うとさらに仕事が増えて面倒くさいから言わないようにしようとか、そこで論理ができる。そういう感じでした。

――やはりいろいろな人がいるから……。

杉江:家庭環境も違うし、収入格差もある。共稼ぎの人も、高収入で妻が働かなくていい人もいる。「私、働いたことないんです」みたいなことを平気で言っちゃって、横で聞いていて大丈夫かな?って思うことはありましたよ。そういうところから小さい派閥みたいなのができたりしてしまうんですが、「協力し合う体制」という目標の元、表面上だけでも仲良くできれば、と思っていましたね。

「頑張らないを頑張ろう」の理由

――本書の中では杉江さんが少しずつ新しい提案をしたりする様子が書かれていますが、摩擦を起こさずに組織を変えるのって、一番難しいことなのではないかと思います。

杉江:今でも僕は人づきあいが好きではないんですけど、このときはいかに摩擦を起こさずにやるかっていうことに集中しました。「外面がいい」も何も本当に良かった。そこで信用できないって思われたら嫌なので。

――結果的に3年間、PTA会長を務められています。

杉江:変えようとすると前例の壁にぶつかるんですね。だから2年目をやらないとしょうがないんだと気付く。思ったよりも、「今までこうやってきたんだからやらなくちゃ」って思い込みを外すのには時間がかかる。僕がスーパーPTA会長だったら(1年でも)できたのかもしれませんが、人間関係を悪化させないためには、2年か3年かけて、ちょっとずつ「これやりたくないよね」って吹き込んでいった。

――最初のスローガンが「頑張らないを頑張ろう」。それがいいなあと思いました。

杉江:消耗すると悪口を言いたくなるし、何かを批判したくなります。「頑張っている私」は、普通は正しいんですよ。でも「こんなにくたくたになるまで頑張ってるのに、なぜ批判されなきゃいけないんだ」って思っちゃったらもう負けなので。PTA頑張っているから仕事を休みますっていうわけにはいかないから、そこまで頑張らなくていいレベルで1年間やれればいいじゃんっていうのがありました。

――教育とか子育ては、ルールとその押し付けが多い印象があります。押し付けていないつもりでも「そんな子育てだとかわいそう」とか、「かわいそう」って言ってしまいがち。

杉江:理想があるのはあっていいと思うけれど、それはその人の中にしかない幻想だと思うので、そのぶつかり合いになってしまうと消耗戦。最終的にはけんかになりますよね。高いアベレージを求めなくてもいい、このぐらいのレベルでいいって思えたらいいんでしょうけどね。

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