今月10日に公示され22日に投開票された第48回衆議院議員総選挙は、自民党単独で衆議院の全ての常任委員会で委員長を出したうえで、全委員会で野党を上回る過半数の委員を確保できる「絶対安定多数」を獲得し圧勝した。連立を組む公明党は議席を減らしたものの両党で定数の「3分の2」以上を維持、与党が大勝した。対する野党は、小池百合子東京都知事が率いる希望の党は公示前勢力57議席を割り込み、共産党、日本維新の会も議席を減らした。一方、枝野幸男元官房長官の立憲民主党は公示前勢力15議席から大きく躍進して野党第1党となった。
一般的に小選挙区制では与党の政権担当期間中の業績評価を中心に有権者の審判が下される。こうした民意の圧倒的な支持は、与党の業績が概ね国民に支持されたことを示すといえる。
「希望」が「絶望」に変わるまで
衆院選の注目の一つは小池百合子都知事率いる希望の党であったのは確かである。解散表明当初は政権交代実現かとさえ言われた。解散序盤時点では、勢いに乗るように自民党に代わる政権交代可能な政党をアピールした。しかし、自らの議席を死守するために従来の主義主張を曲げてでも希望の党に駆け込んだ民進党議員の見苦しさが国民からの顰蹙を買う中、小池代表の失言とが相まって希望の党の勢いが失速すると「反対のために反対する」野党ではなく、建設的な野党の必要性をアピールしはじめた。それでも不利な情勢を挽回できないことがわかると、結局最後は「モリカケ(森友・加計学園疑惑)」で安倍総理批判を展開する普通の野党と化してしまった。このように、二大政党の一角を担える政党を希求する国民の希望が失望から絶望に変わるまで時間はそれほど要しなかった。
曖昧な理念、支離滅裂な公約
こうした希望の党失速は小池代表による「排除」宣言を契機としていることは多くのメディアが指摘しているところである。ただし、政党とは本来、同じ哲学、目標、政治信条を共有する者から構成されるのが筋であり、異分子を「排除」するのは当然ではある。しかし、誰を味方として迎え入れ、誰を排除するかについては、結党までに水面下でやっておくべきことであったのが、第44回衆院選に際しての小泉劇場の再現よろしく敢えて表舞台で行うことでメディアジャックを図るが、かえって排除された側にアンダードッグ効果(判官贔屓)を惹起してしまった。
そうした小池代表への不快感を起点に、開幕まで3年を切った2020年東京オリンピック・パラリンピックの準備や、長引く築地市場から豊洲市場への市場移転問題への対応をはじめとして都政でも実績を上げていないなかで、小池代表への都政と国政の二足の草鞋問題、そもそもの政治姿勢に疑問符がつけられるなど、負のスパイラルがはじまった。
さらに、希望の党が12日に公表した公約も、外交安保・憲法は右派的、経済政策は左派的と、結局、候補者だけではなく公約も寄せ集めであることを露呈させてしまった。また、「満員電車ゼロ」「花粉症ゼロ」など「12のゼロ」はあまりの荒唐無稽さにメディアにさえ黙殺されてしまう体たらくだった(ちなみに筆者の周りでは嘲笑の対象でしかなかった)。
このように、はじまりは小池代表の舌禍ではあったが、小池代表の政策遂行能力への疑問、政党としての理念の曖昧さ、公約の支離滅裂さ加減等が白日の下にさらされた結果、小池バブルが崩壊した。