定年バックパッカー海外放浪記

2017年11月5日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年、横浜生まれ。神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

山岳道路の交通渋滞はカオスの世界

 山岳道路は何本もの大小の渓流を横切って山腹を走っている。1時半を過ぎると雨模様になってきた。一帯は高度3500以上で森林限界を超えており樹木が全くない。降雨があると一気に激流となって渓流を落下してくる。この激流が土砂・岩石を押し流して道路を塞いでしまうのである。

 2時を過ぎた頃バスが渋滞で止まってしまった。車掌が降りて様子を見に行った。500メートル先に大きな渓流を横切る箇所があり数台の車が立ち往生していた。

 渓流が氾濫して対向車の4WDのミニバンが完全にスタックしている。ミニバンのタイヤは空回りするばかり。こちら側からはジープが渡河しようとするがミニバンが邪魔となり立ち往生。
どんどん野次馬が増えてくるがミニバンは一向に動けない。ミニバンは尖った岩の中で空回りするうちに前輪のタイヤがパンクしてしまった。何人かの野次馬が罵声を飛ばし始めて数百人の野次馬の声で辺りが騒然としてきた。インド世界特有の混沌(chaos)である。

増水した沢で数台の車両が立ち往生

混沌の世界を仕切るタフガイ登場

 腹の出たちょび髭の車掌はおもむろにホイッスルを大きく吹いた。一瞬静寂が戻り人々の視線が車掌に集中した。車掌は威厳たっぷりに全員に向かって叫んだ。「俺が指図するから俺の指示に従え」というようなことらしい。

 まずトラックの運転手に牽引用のロープを準備させてトラックとミニバンを繋いだ。タイヤ交換の終わったミニバンをトラックが牽引して渓流から引き揚げた。次に渓流の中を自分で歩いて水深を確認。一番深い部分を石で埋めるように野次馬に協力を呼び掛けた。数十人の若者が裸足になって石を指示された場所に投げ込む。

 その後、車掌は渓流の真ん中の岩に仁王立ちになって交通整理を始めた。オートバイは渓流の上流側の一番浅い端を通行するように指示。そして巧みにホイッスルを吹きながら両手でサインを送り登坂車両と下り車両を交互に通行させた。

 こうして1時間半のカオスは解消された。それまで頼りないちょび髭オヤジと内心軽く見ていたが「ここは天下の公道だ。車掌の俺が仕切るぜ。」と大一番で見得を切ったところが彼の矜持であろう。

車掌の指揮のもと車両を押す野次馬たち

霧中のいろは坂もスイスイ

 海抜5300mのサインを越えてさらに延々と峠を目指す。時刻は17時。眼下に雲海が広がる。ランソン峠を越えてしばらく曲がりくねった下り坂を降りてゆくと雲海に突入。濃霧に覆われたいろは坂をスイスイとバスは下ってゆく。

 舗装されているがガードレールがなくセンターラインもない。視界は10m程度であろう。路面は見えるが道路がどこに向かっているのか方向が掴めない。突然対向車が現れる。ドライバーは何を目印にして急カーブの連続を曲がっているのであろうか不思議な光景であった。まさに神技の領域である。

 20時、豪雨の中マナリーのバスターミナルに無事到着。

⇒第15回に続く

  
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