2024年4月20日(土)

古希バックパッカー海外放浪記

2017年10月8日

(2016.6.18.~9.14 89日間 総費用18万2000円〈航空券含む〉)

書くことで得られるものとは

 7月10日。ナコは海抜3600メートル。2人部屋の相棒のポルトガル男子イバンは毎晩遅くまでベッドの上で書き物をしている。イバンが書き物をしている間にリカーショップで購入した国産ウィスキー「Solan」のグリーンラベルをチビチビやった。一本450ルピー(≒800円)とインドでは割安であった。

湖のまわりに並ぶナコの村落

 イバンは話してみると外見に似合わず内省的な人柄であった。イバンという風変わりな名前は母親がロシア名のイワンから名付けたという。「寝る前にウィスキーを飲んでいるのは瞑想(meditation)と治療(medication)が目的なのだ」と冗談めかして説明したらイバンは真面目に「素晴らしい仏教的な作法だ」と大笑い。

ポルトガル男子イバンとオジサン

 彼は半年インドを放浪したあとポルトガルに戻り職探し(job hunting)する計画だ。大学で心理学を専攻したので児童関係の仕事に就きたいという。イバンの彼女は現在文化人類学(cultural anthropology)の博士論文を書いており博士号を取得したら結婚する予定だ。

 毎晩日記をつけて自分の心に浮かんだことを書き留めている。細かい字でびっしりと書かれている。イバンは書くことで思索が深まるという。イバンは「実は以前から小説を書いておりいつか出版するのが夢なんだ」と恥ずかしそうに言った。

 イバンの書いている小説は普通の人間が日常生活のなかで感じる心の動きを淡々と描くという。「どうも村上春樹のような世界だね」と感想を口にしたらイバンは深く頷いた。ハルキ・ムラカミは彼が傾倒している作家の一人だった。

小川で洗濯するナコの村の少女たち

断崖絶壁山岳道路を威風堂々と走るおんぼろバス

 7月11日。ナコからさらに北に位置する中国国境のタボに移動。インドのローカルバスではおなじみタタ社製の旧式大型バスである。標高3000~4000メートルの高度を大半が未舗装の道路が続く。眼下の遥か下にはスピティー渓谷の茶色い濁流が渦巻いている。このスピティー川の激流に削られた荒々しい渓谷の急峻な山道を気息奄々とローカルバスは進む。

バス停でバスに群がる人々。バス後部のハシゴから屋根の荷台に上がり荷物を積み下ろしする。山岳地帯ではトンネルが低いので屋根は乗車禁止

 道路は未完成区間や修復工事区間が多い。ガードレールはほとんどなく道幅も一定しない。大半が急峻な崖を掘削して作った道路である。岩石がゴロゴロしておりバスは大きく左右に揺れながら走る。大きくバスが傾くとそのまま谷に転落するのではないかと思うくらいの悪路だ。

 大型の対向車が来ると道幅が狭いのでいずれか一方がバックして道を譲る。すれ違う時は道幅一杯まで車両を寄せるためバスは崖すれすれを低速前進する。しばしば石や岩が崩れ落ちて谷底に転げ落ちてゆく。


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