2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月22日

 テッド・クルーズ上院議員は、昨年の大統領選で、共和党の大統領候補の一人でした。論説では、北朝鮮テロ支援国家再指定を求める強い主張をしています。これは議会には幅広くある考えであり、それは強まっているようにみえました。行政府(国務省)のイニシアティブを待たずして議会が独自のイニシアティブを取る動きがあるというような情報は見当たりませんでしたが、11月20日、トランプ大統領は北朝鮮をテロ支援国家に再指定すると表明しました。

 国務省は、今年7月、『2016年テロ支援国家報告書』を発表しています。これまでと同じイラン、スーダン、シリアの3カ国を支援国家に指定、北朝鮮は除外されました(9年連続)。しかし、同報告書は、北朝鮮が資金洗浄やテロ資金調達を止めていないと記述しています。他方、米財務省は、16年6月に北朝鮮を「第一次マネーロンダリング憂慮国」に指定しています。

 米国によるテロ国家再指定は、北朝鮮に圧力をかける有力な手段であり、有効かつ必要な時に発動すべき手段です。目下は安保理制裁の強化が図られているので、当面その効果を見極めることが必要だったかもしれません。また、一方的制裁が安保理制裁の足並みを乱すことになってもいけません。更に、今後追加制裁が必要となった場合に備え、将来の有力な手段として保持しておくに留めておいてもよかったかもしれません。なお、クルーズが言うように、確かに2008年の支援国家指定解除の決定は過早でした。

 交渉論、抑止論など対北朝鮮政策議論の中心課題の一つは、北が交渉を通じ非核化する可能性があるのかどうかということにあります。クルーズは、北が非核化するとの前提は間違っていると主張しています。議論の分かれるところです。北が非核化するかどうかは、国際社会の圧力など種々の事項に依存するでしょう。しかし、北が能力を格段に進展させるに従い、少なくとも非核化の可能性は段々少なくなっているように見えます。

 このところ、北朝鮮は妙に静かです。その理由は不明ですが、再度の挑発に備えておくことが必要です。他方、9月の強力な核実験で豊渓里の核実験場の山の内部が崩れ(実験後地殻崩落による地震が数回観測された他、地形変形も確認されている)実験施設にも影響が出たのではないかとの情報も流れています。興味深い情報と言えるでしょう。

 安保理制裁は徐々に効いてきているものと思われます。10月20日、朝鮮中央通信は、国際社会による経済制裁が子どもや女性を苦しめる「明白な人権蹂躙行為」であるとする「朝鮮制裁被害調査委員会」のスポークスマン談話を配信したと言います。段々状況がひっ迫し始めてきているのでしょう。

  
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