2022年8月18日(木)

足立倫行のプレミアムエッセイ

2018年2月6日

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 私は手を挙げて反論した。英語は下手だが、この種の議論は1年間のアメリカ人やインド人、韓国人らとの共同生活でたびたび経験していた。屁理屈を並べ、食らいついた。

 それが奏効したのだろう。W氏は授業後に何度か構内で私との会話を継続した。

 今も覚えているのは、立看板に囲まれた大隈重信公の銅像前での長い立ち話である。

 「本当にやりたいことを徹底的にやれ。家族、金のこと、社会のしきたりは無視しろ」

 「でも柔軟でなければならない。変化の余地、適応の余地を、いつも残しておけ」

 「世の中に完全なものがあると思うな。しかし、真なるものを求め続けろ」

 私に、2度目の海外の旅をしきりに勧めた。

 W氏の本名はカレル・ヴァン・ウォルフレン。後に、日本外国特派員協会の会長を務め、著作『日本/権力構造の謎』や『人間を幸福にしない日本というシステム』で日本を解剖分析したあのベストセラー作家である。

 68年の12月も終わる頃、私は迷っていた。

 海外に、今度は一人きりであてどなく旅に出るのがいいか、それとも好きな映画の分野に実際に制作側として加わるべきか……。

 全共闘運動には、「造反有理」や「連帯を求めて孤独をおそれず」など幾つものスローガンが飛び交っていたが、私がもっとも気に入っていたのは「自己変革」だ。「自己批判」から「自己変革」、そして「自己解放」へ。

 明治維新100年のこの年の大晦日、私は大学を中退し、シナリオ研究所に通うことを考え始めた。私にとっての「維新」だった。

  
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