科学で斬るスポーツ

2018年1月25日

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 自身が得意とする500mで「気持ちよく氷を捉えられている」と本人が語るように、スタートにおけるダッシュは強く、後半の粘りに影響を与えた。つまり疲れが見られない効率的な滑りをしているということだ。これが、その後の成績に表れた。

 オランダ留学中の2014年11月、W杯ソウル大会500mで、過去の五輪2連覇した李相花(韓国)に勝ち優勝、W杯初優勝をもぎとった。

 16年シーズンは低迷したが、2017年に入ると、向こう敵なしの快進撃を続けた。2月、世界距離別選手権500mを制覇。日本女子初の個人種目優勝の快挙だった。12月、世界スプリント選手権で、これも日本女子初の総合優勝、さらにW杯ソルトレイクシティー大会1000mで1分12秒09の世界記録を樹立。これまでW杯500mは15連勝中だ。

つま先荷重から、かかと荷重

 小平の滑りを正面から描いたイラストが図5だ。左はオランダに渡る前の滑り、右は現在の滑りである。明らかに違う滑りであることは、一目瞭然だが、何がよくなったのか。

図5 小平の滑りを正面から描いたイラスト。左はオランダに渡る前の滑り、右は現在の滑り

 スポーツ科学が専門の関西大学人間健康学部の小田伸午教授は「以前の小平は前傾をなるべくとろうとするあまり、つま先に体重かかかる『つま先荷重』だった。これだと、スケート靴のブレード(刃)が着氷した時にブレーキになってしまっていた。しかし、現在は上体を起こし、かかとに体重がかかる『かかと荷重』になったことで、ブレーキがかからず、上体の体重もかかとにかかる。これで氷面を強く押し、その反動である地面(氷面)反力を効率よく獲得して推進力を得ている」と指摘する。

 小田教授は、かかと荷重がよく見られるものとして相撲の立ち会いを挙げる。上体をやや起こし、腰を落として、かかとを踏む(かかと荷重)力士は、相手の力をしっかり受け止められ、体勢が乱れることがない。地面反力を利用することを体が知っているからだ。

 「かかとの漢字は足偏に重い。踵。昔の人は動作原理をよくしっていたからでしょう」と指摘する。

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