2024年4月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年1月31日

 このワシントン・ポスト紙の社説の趣旨には賛成できます。

 オバマは通信機器やレーダーなど殺傷兵器以外の軍事品をウクライナに提供してきましたが、殺傷用の武器の供与を拒否してきました。オバマは事態のエスカレーションにつながるなど、ああだ、こうだと言っていましたが、オバマは、プーチンの行動パターンについて誤解をしていたものと考えられます。プーチンは相手の抵抗が弱いと、どんどん攻め込む傾向があります。グルジアのアブハジアや南オセチアの独立国家化、クリミアの併合などを見ても、それは明らかです。要するに、プーチンにはたいていの場合、力の言葉しか効き目がありません。プーチンと言うよりロシアに対してはと言ってもよいかもしれません。レーガンの「力による平和」政策が対ソ関係で大変有効であったことを、この論説が想起しているのは適切です。

 プーチンが東部ウクライナへの平和維持軍導入を最近主張しました。その目的は親露勢力が優位に立っている東部ウクライナの現状の固定化を狙ったものでしたが、それを逆手に取って、米欧はロシアを東部ウクライナより撤退させる契機にこれをしようとしています。米欧とロシアの交渉は双方の思惑が違いすぎ、どこにも行きつかないでしょうが、交渉をしていること自体がロシアをけん制することにもなるでしょう。

 3月のロシアの大統領選挙はナヴァルヌイの立候補が選管から拒否され、ますますプーチン再選が間違いなしのノンイベントになってきています。プーチンが選挙での支持固めにウクライナ情勢をエスカレートさせると言う心配は無用でしょう。

 対ロ制裁の堅持、ウクライナへの武器供与、国際秩序侵害の逆転が、これからもウクライナに関する対ロ政策の中心であるべきでしょう。トランプのプーチン好きにもかかわらず、米ロ関係の改善は近い将来見込めないと前提して良いと思われます。

  
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