2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年12月5日

 ワシントンポスト紙コラムニストのロウギンが、10月29日付の同紙に「トランプ政権はウクライナへの武器供給でぐずぐずしている」との論説を寄せ、ウクライナへの武器供与の決定を迅速にすべし、と論じています。論説の要旨は、次の通りです。

(iStock.com/colematt/larryrains/Good_Stock)

 何カ月もの間議論をしながら、トランプ政権はウクライナに防御兵器を供給する問題でぐずぐずしている。結果として、キエフにロシアの侵略に抵抗する手段を拒否したオバマ政権の政策を継続し、トランプのプーチンに立ち向かう意思に疑念を呼び起こしている。

 国家安全保障会議高官は、ウクライナの占領地にロシアが戦車、大砲などを導入しているのに対抗し、ウクライナ治安部隊の能力を強化する問題を検討しており、数週間前閣僚会合を開き、現在はトランプに提示する選択肢を作成している、と述べた。

 トランプの決定はドンバス地方を超えて重要な意味を持つ。ポロシェンコの党の主要議員ゲラシモフは、「これは兵器だけの話ではない。政治的なシグナルの問題である。自由世界の指導者として米国が我々を助けないと、次は誰かの問題になる」と述べた。

 米国はこれまでウクライナに装甲車、医療関連機材、夜間ゴーグルなどの軍事関連品を提供してきた。しかしウクライナはロシアの侵略に対抗する武器を懇請してきた。米国は、対戦車ミサイル、ロシア領も監視しうる対大砲レーダー、情報収集の能力と通信設備の供給を拒否してきた。国務省と軍は議会の両党と共にこのオバマ政策を変えさせようとしてきたが、できなかった。2015年、下院は賛成348、反対48でオバマに防御兵器提供を求める決議を採択した。

 ロシアは東部ウクライナでの兵力の増強に加え、ウクライナ領に平和維持部隊を展開することを提案し、分離地域の正統性を強化しようとしている。

 トランプ政権のウクライナ政策は、ミンスク・プロセスの再活性化を中心に据え、停戦順守、重火器撤去、国境尊重を求めているが、プーチンはいずれも実施していない。

 オバマ政権は、ウクライナへの武器供給は外交の邪魔になり、エスカレーションにつながると懸念していた。しかしマティス国防長官は、「防御用兵器供与は侵略者に対するものでなければ、挑発的ではない。ウクライナは侵略者ではない」と8月にキエフで述べた。

 2016年の共和党大会でトランプ陣営は、ウクライナへの致死的兵器供給を綱領から落とした。それ以来、トランプがウクライナを防衛するのかどうかの問題には答えがない。

 トランプは米ロ関係を改善したいというが、これは力の立場に立ってのみ出来る。米国はジョージア、モルドヴァ、クリミアでロシアの介入を阻止できなかった。トランプはウクライナでロシアの侵略に対抗するか、プーチンが今一つの「凍結された紛争」を作るのを許すか、決めなければならない。

出典:Josh Rogin ‘Trump administration stalled on whether to arm Ukraine’ (Washington Post, October 29, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/trump-administration-stalled-on-whether-to-arm-ukraine/2017/10/29/f83874da-bb53-11e7-a908-a3470754bbb9_story.html?utm_term=.ccbb1a7d4ef7


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