2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2017年10月31日

 ロシア政府による米大統領選干渉疑惑(ロシアゲート)を捜査するロバート・モラー特別検察官は30日、トランプ陣営の選対本部長だったポール・マナフォート氏ら2人を脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)などの容疑で起訴した。日本などアジア歴訪を直前にしたトランプ大統領への打撃は必至で、大統領がモラー検察官を解任する懸念も浮上している。

(donfiore/iStock)

突破口

 起訴されたのはマナフォート氏と、同氏のビジネスパートナーのリック・ゲーツ氏。ロシアゲートでの起訴は今回が初めてだ。ロシアゲートの核心は、昨年の米大統領選でトランプ氏に勝たせるため、ロシアとトランプ陣営が“結託”し、民主党本部へのハッキングなどでクリントン氏に不利な情報を入手、流したというものだ。

 マナフォート氏らの起訴はこの核心に迫るためのあくまでも「突破口」という印象が強い。マナフォート氏らの容疑は12の罪状に上っているが、その中の1つは、ロシアのプーチン大統領に近いウクライナのヤヌコビッチ前大統領らのためのロビー活動などから得た巨額な収入を申告せずに海外の銀行に隠匿していた、というもの。

 マナフォート氏は昨年6月、トランプ氏の長男ジュニア氏がニューヨークのトランプ・タワーで、民主党の対立候補だったクリントン氏に不利な情報を提供すると持ち掛けてきたロシア人弁護士と会談した際、一緒に同席した。同氏は昨年3月にトランプ陣営に加わり、トランプ氏から評価されて、5月には選対本部長に昇格した。

 8月にはヤヌコビッチ氏との不透明な関係を報じられて本部長を辞任に追い込まれたが、本部長の在任中に東欧でロシア関係者と極秘に会ったとも伝えられるなどロシア・コネクションを使って、プーチン政権とトランプ陣営の“橋渡し”の役割を担っていたのではないか、と見られていた。

 5月にロシアゲートの捜査指揮官に任じられたモラー特別検察官はこれまで、マナフォート氏と、ロシア大使と会談していたことが発覚して辞任したマイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の2人に絞って捜査を進めてきた。明らかにこの2人を「突破口」にしてトランプ氏やトランプ氏の周辺に迫ろうという作戦だ。

 ロシア人弁護士と会談していたトランプ氏の長男や、フリン氏とともにロシア大使と会談していた娘婿のジャレッド・クシュナー大統領上級顧問らがその対象だ。最大の狙いは、トランプ氏自身がロシアゲートに直接関与していたのか、また捜査を妨害するため米連邦捜査局(FBI)のコミー長官を解任したのか、という疑惑の解明だろう。


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