2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年1月31日

 12月30日付のワシントン・ポスト紙が「米国のウクライナへの武器供与はトランプの価値ある選択」との社説を掲載しています。社説の論旨は、次の通りです。

(iStock.com/mocoo/ grmarc/ djvstock/Alisovna/oleg7799/colematt)

 トランプ政権はウクライナに防御用兵器を提供することに何カ月も躊躇してきたが、今週(12月25日の週)そうすることを決めた。タイミングは最適であった。東部ウクライナへのロシアの侵略は、12月半ば激しくなった。集中砲撃は、ドネツクとルガンスクへのロシアの3年越しの介入が「凍結された紛争」になったと言うのはうそであることを示す。プーチンが3月の大統領選挙前に国内の支持を固めるために、ウクライナ攻撃をしているとの見方もある。

 トランプのJavelin対戦車ミサイル供与と狙撃用ライフルの商業的販売の許可は、ロシアの攻勢を止められないだろうが、プーチンに躊躇はさせる。トランプが称賛するレーガンの「力による平和」原則のふさわしい適用である。まずプーチンには、ウクライナであれサイバー空間であれ、侵略はコストを伴うことを理解させなければならない。

 ウクライナが入手する兵器の量は小さいが、ウクライナの防衛の弱点を補強する。東部前線では、ウクライナ軍は日常的に射撃の危険に晒されているが、販売予定のModel M107A1狙撃システムは戦場の平等化をもたらす。同様に、Javelinミサイルはロシアの戦車を破壊でき、クレムリンにロシア兵士の生命へのコストを考えることを余儀なくさせる。

 トランプはこの決定で、キエフに致命的兵器を提供すべしとの補佐官や議会の提案を拒否したオバマの姿勢を転換する。オバマは兵器の供給がロシアに更なるエスカレーションの動機を与えるだけであると理由づけしていた。今やこれが意味ある理由づけか、あるいは行動しないための言い訳であったか、知ることになろう。今のところ、モスクワの反応は抑えられている。ウクライナ軍と東部の分離指導者の間での大量の捕虜の交換は事件もなく行なわれ、ティラーソンとラブロフは平和解決のための話し合い継続に電話で合意した。

 3月18日の大統領選挙の後、プーチンはドネツクとルガンスクでの損耗を減らすことを考慮するかもしれない。トランプ政権は、米ロ関係の正常化はウクライナ情勢の平和的解決なしにはあり得ないということをはっきりさせている。

 プーチンの発言をとらえ、トランプ政権と欧州の同盟国は、ロシアの撤退後に国際平和維持部隊を東部ウクライナに入れる計画を交渉しようと申し出ている。もしプーチンが西側との関係を本当にリセットしたいならば、彼にはその機会がある。そうでないのならば、ウクライナが自己防衛のための手段を持つことは良い事だろう。

出典:Washington Post ‘Trump’s worthy choice to provide Ukraine weapons’ (December 30, 2017)
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/trumps-worthy-choice-to-provide-ukraine-weapons/2017/12/30/c780d8d8-ebf9-11e7-8a6a-80acf0774e64_story.html


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