台湾旅行法は、昨年1月に下院に提案され、本年1月9日に下院本会議を通過、2月12日に上院外交委員会で可決され、2月28日に上院本会議を通過した。あとは、トランプ大統領が署名すれば、法律として発効することになる。
同法の上院での可決に先立つ2月21日には、米上院軍事委員会のジェームズ・インホフ筆頭理事が率いる議員団が台湾を訪問、蔡英文総統と会見し、蔡総統は同法についての感謝の意を伝えている。台湾旅行法の趣旨を実行した形となった。
中国側は、同法が「一つの中国」の原則に反するとして強く反発している。中国外交部の華春瑩報道官は、3月1日の定例記者会見で、「台湾旅行法のいくつかの条項は、法的拘束力はないものの、“一つのの中国の原則”、米中間の3つのコミュニケに反する。中国は強い不満と抗議を表明する」などと述べている。
人民日報系の環球時報は、3月1日付け社説で「経済的には台湾は中国に依存している。軍事的には、人民解放軍の強さが台湾海峡の軍事的・政治的情勢を根本的に変えた」、「台湾の独立勢力は、米国が用いることのできる対中カードである。中国は、同勢力に的を絞った対応をし得る。台湾にとり、米国の中国に対する敵意に巻き込まれるのは良い選択肢ではない」などと、台湾を恫喝している(‘US lawmakers vent anxiety via Taiwan bill’, Global Times, March 1, 2018)。
米国側の台湾を支持する最近の重要な動きには、台湾旅行法以外にも、昨年12月にトランプ大統領が署名し成立した、2018会計年度の国防授権法(2018国防授権法)もある。2018国防授権法には、米艦船の高雄など台湾の港への定期的な寄港、米太平洋軍による台湾艦船の入港や停泊の要請受け入れ、などの提言が盛り込まれている。なお、オバマ大統領の下で成立した2017国防授権法でも、米台間の高級将校、国防担当高官の交流プログラムが盛り込まれており、今回の台湾旅行法の内容は目新しいものではない。
2018国防授権法に関しては、在米中国大使館公使が「米国の艦船が台湾の高雄港に入港する日が、中国が台湾を武力統一する日になろう」と、異例の威嚇的発言をしている。中国側が、米国による台湾への軍事的関与に対して極めて敏感になっていることを示している。「中華民族の偉大な復興」を掲げる習近平政権にとっては、中台の「統一」は、政権の存在理由にかかわる最重要事項であると言える。今後とも、硬軟両様で働きかけを強めていくものと思われる。
台湾旅行法は、今後の米中関係、中台関係にとっての一つの対立点になるだろう。
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