2024年11月26日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年4月24日

 英国のソールズベリーでの元スパイに対する化学兵器による襲撃事件を受け、対抗措置として、外交官追放だけではなく、プーチンとその取り巻きの財布を対象とした制裁措置を望む声が高まっていた。今回の米財務省による措置は、このスクリパル事件とは無関係とされているが、効果としては、プーチン取り巻きの財布な打撃を与えるものになっている。かなり厳しい内容である。

 制裁対象とされた7名のオリガルヒは皆有名人であるが、特に注目に値するのは次の人々である。

 ・オレグ・デルパスカ:エリツィンの娘婿。資金洗浄の疑いなどがかけられている。日本の商社とも深い関係を持っていた。

 ・キリル・シャマーノフ:プーチンの娘、カテリーナ・ティホーノヴァの夫。ロシアの石油ガス探査会社シブールの実質的オーナー。

 ・イゴール・ローテンベルグ:石油・ガス掘削会社ガスプロム・ブレニエの所有者。

 ロシア側は、制裁措置に強く反発している。ロシア外務省は米国の行為は「泥棒行為」であると非難し、厳しい報復を行うと声明している。何をするのか見てみる必要があるが、ロシアの管轄下にある米国の資産は限られており、その凍結は対ロ投資をさらに減少させロシア経済に打撃を与えるので、どこまでやるかロシアとしても決定がむずかしい問題である。

 トランプ大統領は同じく4月6日付けの発表で、シリアのアサド政権支援、2016年の米大統領選への干渉疑惑、クリミア併合、東部ウクライナにおける侵略的行為、INF条約違反、英国における化学兵器を用いた元スパイ襲撃疑惑など、数多くのロシアの行為を挙げて厳しく非難し世界中におけるロシアの邪悪な行為に対する抑止を強化する、としている。

 トランプ政権の対ロ政策は状況対応型であるが、結果としてやるべきことをやっているように思われる。制裁強化もそうと言えるし、NATO、特にバルト3国などロシアに隣接する加盟国との協力強化を打ち出している。

 西側のロシアに対する結束は強化されている。英国での元スパイ襲撃がロシアの仕業であるとすれば(OPCWは、英国の調査結果を追認している)、ロシアは愚かな冒険をしたと言わざるを得ない。

  
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