2018年3月18日にロシア大統領選挙が行われた。現職のウラジーミル・プーチン大統領の再選は間違いないと世界は見ていたが、プーチン本人は「どのように勝つのか」という勝ち方に極めて過敏になり、なりふり構わぬ様々な手段を講じて、より良い形の勝利を目指したと言われている。選挙はプーチンの期待通りの結果だったのだろうか、また、今後のロシアはどこに向かっていくのだろうか。
投票日の3月18日はクリミア併合記念日
そもそも、大統領選挙の日程は、2017年2月には3月11日に決定したと発表されていたが、5月に18日に変更された。プーチンが大統領選挙への出馬を表明したのは12月6日であったが、最初から出馬を決めていたのは間違いなく、その変更の背景には、プーチン大統領の大統領選挙で理想的な結果を残す上での不安があったのではないかと考える。3月18日は4年前にクリミアを併合した記念日であり、それを契機に現在に至るまでプーチンはロシアにおいて高い大統領支持率を維持するようになった。逆に、クリミア併合がなければ、プーチンの現在の支持率はずっと低かった可能性が高い。クリミア併合は、ロシア人の愛国心を刺激し、強い指導者への尊敬を作り出す上で大きな意味を持った。投票日をクリミア併合と同じ日にすることで、プーチンへの強い尊敬の念と愛国心を再び思い出させ、得票につなげたいと考えたと思われる。
他方、2012年には激しい反プーチン運動がロシアを席巻し、以後、プーチン支持率も低迷していたことも忘れるべきではないだろう。クリミア併合の熱狂が段々冷めてくる一方、国民の経済状況や生活のレベルなどへの不満が募る中、プーチンは国民の自身への支持を揺るぎないものにするための保険を求めたと考えられる。そして、その一つが、「クリミア併合の熱狂を再認識させる」ということだったのだ。
今回、プーチンは選挙運動をほとんど行わず、他の候補者との差を見せつける一方、選挙運動の代わりに3月1日に大統領教書演説を行い(後述)、公務でクリミア半島など全国を回りながら、地方にも目を配る姿勢をアピールしつつ、各地で大きな声援を獲得してきた。
さらに、プーチンは選挙での勝利は当たり前であって、重要なのは投票率だと考えていたという。より高い投票率を獲得することによって真の正統性を確保できるということだ。プーチンは70%の投票率と、70%の得票率を目指していた。野党指導者アレクセイ・ナワルヌイをはじめとした反体制派への立候補の権利剥奪や弾圧などはかなり報じられているが、プーチンとしては、選挙戦でのライバルとしての野党候補者というより、選挙への投票ボイコットを呼びかける者としての反対派の方が脅威なのだ。そして、なりふり構わぬ「投票率」を高めるための工作がなされていた。