2024年11月22日(金)

補講 北朝鮮入門

2018年4月18日

トランプ氏の動きは北朝鮮にも想定外

 『労働新聞』が南北首脳会談の開催に言及するようになった一方、本稿を執筆している4月17日時点では米朝首脳会談への具体的な言及はない。

 ただ、米朝関係が前向きに動いていることを示唆するような報道は出てきた。朝鮮中央通信が3月20日に配信した論評は「最近、われわれの主動的な措置と平和愛好的な提案によって北南間には劇的な和解の雰囲気が醸成され、朝米関係でも変化の機運が現れている」と評した。そして前述の4月10日付『労働新聞』の記事は、対米関係について「対話」が進んでいることを初めて明示した。

 これと関連して注目すべきなのは、トランプ大統領が米朝首脳会談の受け入れを表明した3月8日(北朝鮮では9日)の直後から、『労働新聞』で頻繁に使われてきた用語がいくつも消えたということである。

 わかりやすいのは、連日のように行われてきたトランプ批判が『労働新聞』から一切なくなったことだ。「トランプ」への言及は3月10日付が最後となった。この他にも、「核保有国」は3月9日付、「核強国」は3月10日付を最後に言及がなくなっている。

 トランプ大統領が米朝首脳会談を受け入れたことへの北朝鮮の驚きぶりを示しているのだろう。外交当局者による実務的な協議から始め、閣僚級会談を開いたうえで首脳会談という通常のプロセスを無視するトランプ大統領の動きは、さすがに想定外だったようだ。早期の首脳会談を予想していたならば、『労働新聞』のこうした変化はもっと早い時期に見られたはずである。

 北朝鮮メディアの論調分析では、新たな用語の登場はもちろん、頻出していた用語の使用が減少したり、使われなくなったりということにも注目しなければならない。

 北朝鮮メディアからは「停戦協定」や「平和協定」という用語も見られなくなった。これらが何を意味するか現時点で判断するのは時期尚早だ。ただ、米国に北朝鮮体制の安全を保証させるという目標のために従来の主張を転換する可能性もあり、注意深く観察すべきであろう。


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