4月27日の南北首脳会談と6月初めまでに行われる予定の米朝首脳会談——。二つの首脳会談に対して北朝鮮が見せる姿勢は大きく異なっている。それは、北朝鮮の公式見解を伝える『労働新聞』の紙面を通じて読み取ることができる。
トランプ米大統領は3月8日(日本時間9日)、金正恩国務委員長からの会談申し入れを受け入れると表明した。韓国の文在寅大統領の特使が金正恩委員長からの提案を伝え、それをその場で受け入れるという形だった。ところが、『労働新聞』をはじめとする北朝鮮の国営メディアはそれから1カ月以上経った本稿執筆時点(4月17日)でも、米朝首脳会談について言及していない。それは、『労働新聞』が南北関係に関する記事を何回も掲載して今後の展開に自信を見せてきたのとは対照的な姿である。
南北は特使訪朝時から首脳会談を示唆
南北首脳会談については扱いが全く違う。韓国側によると、金正恩委員長は3月5日、訪朝した文在寅大統領の特使との会談で南北首脳会談の開催に同意した。この時の南北合意は「4月末に板門店の韓国側施設『平和の家』で首脳会談を行う」というもので、その後の協議で4月27日開催が決まった。
『労働新聞』はこの時、「敬愛する最高領導者、金正恩同志が南朝鮮(韓国)大統領の特使代表団成員達と接見された」という記事を掲載した(2018年3月6日付)。その記事で「敬愛する最高領導者同志(金正恩委員長)は、南側特使から首脳相逢(北朝鮮は首脳会談を「首脳相逢」と呼ぶ)に関連した文在寅大統領の意を伝えられて意見を交換され、満足な合意を見られた」と述べている。南北首脳会談の合意を明示してはいないものの、韓国の特使から首脳会談についての文在寅大統領の意見を聞いて満足したというのだから、首脳会談の開催を示唆したものだと評価できる。行間を読むことが習慣化している平壌市民には、それで十分な伝達だったのかもしれない。
さらに南北の閣僚級による協議で首脳会談の日程が決まった時には、『労働新聞』は「(協議において発表された)共同報道文には北南首脳相逢の時期と場所が明らかに」されたと書いた(『労働新聞』3月30日付)。日付や場所は明示しなかったが、この時点で南北首脳会談が開かれることは明確にしたといえる。
『労働新聞』が南北首脳会談の開催日を初めて明確にしたのは、4月10日付である。この日の『労働新聞』は「朝鮮労働党委員長金正恩同志の指導下に朝鮮労働党中央委員会政治局会議が開催された」と伝え、前日に開かれた政治局会議において金正恩委員長が報告を行った様子を次のように報じている。
「今月27日に板門店南側地域『平和の家』で開催される北南首脳相逢と会談に言及し、当面の北南関係の発展方向と朝米対話の展望を深く分析・評価され、今後の国際関係に関する方針と対応方向をはじめとするわが党が堅持していくべき戦略・戦術的諸問題を提示」した。
南北首脳会談については、開催の事実を自国民に少しずつ開示するようになったといえる。ただ、論評は加えられていない。