2024年11月21日(木)

Wedge REPORT

2011年3月4日

ジレンマに再び直面

 以上のように、中央集権化すれば地方が財力・活力を失いかねず、地方分権化すれば地方の統制がとれなくなり混乱が生じやすくなる。また、郷レベルまで統治を徹底しようとすると政府機構が膨張しがちになり、効率化のため県レベルまでにとどめると末端の統治が弛緩する懸念が強まる。今日の中国は国内で再び歴史的な2つのジレンマに直面しているのである。

 では、われわれ日本人は中国とどう付き合っていけばいいのだろうか。一言でいえば、「居安思危」である。中国は今後しばらく隆盛期にあり、対外拡張的活動も活発であろうが、歴史的には衰退期に表面化する問題もすでに随所に現れている。これまでにも世界は中国政治の急変に振り回されてきた。安定期にこそさまざまなシナリオを検討し、備え始めるべきである。

 企業としては中国進出のリスクを見直し、リスク分散することである。外資優遇税制、低賃金労働などの従来のイメージを捨てることが肝要である。進出企業は行財政制度改革により権限を失う市レベル、権限を得る県レベルの政府間の「争い」に巻き込まれかねないため、一方ではなく、双方とコミュニケーションを保つ必要がある。

 中国は企業のみならず、日本人の普段の生活に直結した切実な存在となっている。中国の歴史と現実に対する理解を深める必要がますます高まっていることを最後に強調しておきたい。
 

◆WEDGE2011年3月号より

 

 


 

 

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