2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月1日

 カーター元大統領が「和平かアパルトヘイトか」という本を書いて、ユダヤ・ロビーから袋叩きに会ったが、カーター元大統領は極めて常識的な意見を述べたに過ぎない。 

 パレスチナ人の人権への蔑視とホロコースト経験から、やらないとやられると考えるユダヤ人の過剰反応癖が、今回のような事態を招いたのであろう。 

 米国大使館のエルサレム移転については、西エルサレムへの移転であり、東エルサレムは無関係という意見もある。しかし、ネタニヤフ首相のイスラエルの分割されない永遠の首都エルサレムのレトリックは、こういう意見を意味のないものにする。 

 トランプ大統領は、エルサレムをイスラエルの首都として認定することで、和平の見通しに大打撃を与え、イスラエル・パレスチナ問題をアラブ・イスラエル紛争から、イスラム対イスラエルの紛争に格上げしてしまった。トルコが米国、イスラエルの大使の召還を求めるなどが、その現れであるが、インドネシアでもバングラデシュでも、エルサレム問題で、トランプ大統領の発表後、デモが行われた。 困ったことであるが、米、イスラエルのやり方をその都度批判し、けん制していくぐらいしか手がない。 欧州、中東、さらにはアジアのイスラム諸国でも、反ユダヤ主義が強まりかねない懸念がある。 
 

  
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