2024年7月22日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月6日

 日本と太平洋諸島フォーラム(PIF)加盟国(豪州、ニュージーランド、太平洋島嶼国14か国)は、1997年以降3年に1回、太平洋・島サミットを日本国内で開催している。今回は、上記17か国に加えてPIFの準加盟国である仏領ポリネシアとニューカレドニアが参加した。太平洋の島嶼国は長年にわたり日本と緊密な関係にある。特に、マグロやカツオなどの水産資源の管理、気候変動による海面上昇への対策などで協力を深めてきた。

 上記首脳宣言は、法の支配、国際法の重視を謳い、日本の国家戦略である「自由で開かれたインド太平洋戦略」を明記するなど、日本が国際的ルールに則った海洋秩序を擁護する海洋国家のリーダーの一員であることを示す、良い内容である。最近、中国による太平洋島嶼国への進出が目立つが、当然、それを意識していると思われる。「自由で開かれたインド太平洋戦略」の明記もそうであるし、「国際スタンダードにのっとった、開かれ、透明で、非排他的かつ持続可能な形での」質の高いインフラ整備というのもそうであろう。

 中国が太平洋の島嶼国の取り込みを狙う第一の理由は、台湾と国交を持つ国が6か国(ツバル、ソロモン諸島、マーシャル諸島、パラオ、キリバス、ナウル)も集中しているためである。今や台湾と国交を持つ国は、最近、中米のドミニカ共和国とアフリカのブルキナファソが相次いで断交し、18か国に減っている。太平洋の島嶼国が3分の1を占める計算になる。太平洋の島嶼国は、中国にとり、もっと大きな戦略的意味もある。これらの国々は、中国が中期的な進出目標とする第二列島線(小笠原~グアム~サイパン~パプアニューギニア)の終点およびその周辺に位置するという点である。中国は、これらの国々に対し、他の地域におけるのと同様、経済支援による攻勢を強めていくであろう。また、中国は、PIFへの関与も強めようとしている。

 中国の進出に対し、同地域を「裏庭」と見てきた豪州やニュージーランドは警戒を強めている。ただ、2006年にフィジーで起きたクーデターに対し両国が厳しい姿勢を示したことにフィジーが反発し対中傾斜を強めるなどの事例もあり、島嶼国と豪州、ニュージーランドの双方と良好な関係を持つ日本の役割は重要である。

 今回新たに参加した仏領ポリネシアと仏自治領ニューカレドニアには、フランス軍が駐留しており、フランスは中国の太平洋進出に目を向け始めている。日本とフランスとの間では「2プラス2」(外交・防衛閣僚会合)があり、両国は防衛協力を強化している。英国も航行の自由を掲げ、同じく日本と「2プラス2」を持ち、豪州への英軍の立ち寄りを頻繁にするなど、太平洋への関与を強めている。法の支配に基づく国際秩序を支持する西側の主要国が太平洋において連携を深めていく流れが出来つつあるように見える。太平洋・島サミットを中心とする、日本と太平洋島嶼国との緊密な関係は、間接的であるにせよ、益々貴重な財産になると思われる。

 なお、今回の首脳宣言では北朝鮮について詳細な言及があり、一つには、北朝鮮の核・ミサイル問題が国際社会全体の問題であること、もう一つにはPIF加盟国のサモアやマーシャル諸島に設立されたペーパーカンパニーが「瀬取り」に関与していた事案が指摘されるなど、具体的な問題として対応する必要があるためである。

  
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