2024年11月22日(金)

ネット炎上のかけらを拾いに

2018年5月30日

路上で複数の女性に痴漢する男の動画も拡散

 また、同じ頃に別のユーザーから投稿され、5万回以上リツイートされている動画もある。「栄に痴漢じじい降臨」という文字とともにツイートされているこの動画には、路上ですれ違い様に女性の臀部付近を触る男が映っている。男はふらふらと歩きながら、すれ違うスーツ姿の男性にもぶつかっているが、特に女性につきまとうような仕草を見せ、2分間の動画の中で少なくとも5人の女性に意図的に触っている様子が確認できる。

 すれ違いざまに故意に強くぶつかったり、故意に触ったりする。そのような行為は、立証が非常に難しい。接触された側も、それが故意なのかどうかわからないし、咄嗟に相手を捕まえる行動に出られる人は少数だ。また、捕まえたとしても証拠がないし、被害を人に言ったところで「勘違いでは」「自意識過剰では」と言われてしまうこともある。

 動画への反応では、「撮影する前に止めろ」というコメントもあるが、証拠を撮影することは、犯罪抑止に大きな効果があるのではないかと感じる。また、ネット上でこういった動画が拡散されることにより、一部の人だけが被害に遭っていたすれ違いざまの通り魔的な犯行が、多くの人の知るところになったことは大きい。

目に見える傷が残らない犯罪行為

 故意に強くぶつかったり、触ったりといった行為は、目に見えるケガを負わせるほどの加害ではないことが厄介だ。

 故意にぶつかるのは、相手に理不尽な悪意や憎しみを抱いているから。勝手に人の体に触るのは、そうやっても相手が文句を言わないと見下し、バカにしているから。他人から悪意や蔑視の塊をぶつけられるのは恐ろしく屈辱的なことだ。しかし、こういった心の傷つきや悔しさを測るのはとても難しい。現代ではPTSDやトラウマといった言葉が一般的になりつつあるが、「故意にぶつかられた」「一瞬触られた」など、「迷惑行為」で収まってしまう範疇の加害行為で、心の傷つきを認めさせるのは、まだなかなか難しいだろう。

 しかし実際、他人からわざと接触されれば、傷つくし悔しい。「それぐらいで」とは思わないようにしたい。なぜなら、「それぐらいで」と加害行為を軽視することは、加害者擁護になるからだ。タックル男の肩を持つことは、したくない。

  
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