Jリーグがイニエスタ(編注:スペイン代表ミッドフィルダー、今年5月にヴィッセル神戸加入が発表された。推定年俸はJリーグ史上最高の30億円超とも報じられる)やフェルナンド・トーレス(編注:リーガ・エスパニョーラの強豪アトレチコ・マドリー所属、Jリーグチームへの加入が噂されている)、ポドルスキ(元ドイツ代表、現ヴィッセル神戸所属)の加入騒ぎで日常的に盛り上がる昨今、今後は日本代表とJリーグのバランスが変わってくるのではないかと思います。「クラブ>代表」という構図は、欧州では当たり前で、日本もそれに近づくかもしれません。
好調なJリーグに将来性を期待できる今、ワールドカップが盛り上がっていないことを、ネガティブには考える必要はありません。ビジネスサイドは大慌てかもしれませんが……。ただし、モデルの転換期にあるとすれば、僕を含めたサッカーに関わる全員が変化を迫られることになるでしょう。
――代表チームの試合だけがゴールデンタイムに地上波のテレビで生放送され、Jリーグはニュース番組のスポーツコーナーで結果のみ伝えられる、という状況は、サッカーを応援しているのか、それともナショナリズムの発露として代表チームを応援しているのか、複雑な状況です。とは言ってもワールドカップグループステージ第1戦のコロンビア戦は6月19日に迫っています。サッカーに普段興味がない人でも、選手の「狂気」や背景を知ることで、試合観戦が楽しみになると思うのですが、日本代表の注目選手について教えてください。
清水:連載コラムに書いた個々の狂気には、僕が共感するものと、共感しないものがありました。たとえば、「ワールドカップ優勝」と大言壮語で自分にプレッシャーをかける本田圭佑のやり方は、理解はできるけど、真似はしたくない、というのが率直な感想です。また、自分のやり方を、結果的にチームに押し付けてしまうことも良くない。サッカーのような団体競技ではなく個人競技なら、好きにやればいいと思いますが。
僕自身はGKの川島永嗣のように、結果にとらわれず、自分のやることに日々充実感を持って取り組み、結果は後からついてくるもの、と考えるほうが性に合っています。他人の評価によって結果が決まる世界なので、逆に本田のように結果にモチベーションの源を置きすぎると、自身がブレてしまう。僕は自分に集中したいので、それは嫌だなと。GK思考に近いのかもしれません。この辺りはスポーツ心理学の考え方がもとになっています。
そういう共感、非共感も、本書の面白いところかなと思います。そんなマジメな話ばかりではないですが。
――思考が共感できる選手だと感情移入しやすく、応援したくなりますね。私個人としては、Jリーグも見ていることもあり、最近の試合で存在感が増している大島僚太選手に注目していますが、残念ながら本書ではまだ取り上げられていませんでした。
清水:まだ彼の狂気がよくわからず、ズバッと書く自信もなかったので、取り上げていません。連載中のヤングチャンピオンで、彼だけに限らず、まだ取り上げていない選手について近日中に書くことになると思います。
――日本代表に関しては、盛り上がり具合も、結果に関しても悲観的な予測を多く目にします。それでは日本代表を離れ、今回のワールドカップ全体に目を向けて、清水さんが特に注目している試合はありますか?
清水:やはり、ネイマール擁するブラジルとドイツの再戦ではないでしょうか。前回のブラジル・ワールドカップ決勝では1-7の大差で、母国開催にもかかわらずブラジルは大敗を喫しました。プライドを傷つけられたサッカー王国が雪辱に燃えています。最注目ですね。決勝トーナメント1回戦か、決勝で当たる可能性があります。(編注:ブラジルはグループE組、ドイツはグループF組、グループステージでブラジルが1位、ドイツが2位なら7月2日に行われる決勝トーナメント1回戦で、グループステージでブラジルが2位、ドイツが1位なら決勝に進むまで対戦はない)
――最後に出版後の反響や、あえて本書を薦めたい人たちについて教えてください。
清水:出版後の反響はまだ少ないのが現状です。『アホが勝ち組、利口は負け組』というわかりづらいタイトルが、若干敬遠されているのかもしれません。でも、読んだ人は100%面白いと言ってくれます。ですから、多くの人にオススメしたいです。
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