2024年4月26日(金)

ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2011年4月16日

 しかし、考えてみてほしい。もし我々が、たまたま、「本当のこと」に関する最も深く、最も深刻な不安を打ち明けてくれるほど信頼してくれている友人からこんな話を聞かされたのだとしたら、NRCの科学者は、それを言ったら米国政府全体はどうだっただろう? 完全に内々の場で、「最悪の事態が起きた場合」に心配しなければならないことについて、一体どんな会話が交わされていただろうか?

 この結論は、我々が聞いた事実に基づく全くの憶測だ。だが、我々がここで日々耳にする東電および日本政府の説明と、事態の展開やリスクに関する米国などによる評価の間に生じ、今でも時折メディアに取り上げられる「ズレ」の大きな理由は、我々が交わしたのとよく似た会話が基盤となっていると思われる。

知日派のシンクタンク・アナリストが指摘
日本の悲劇に潜む「好機」

 今月のコラムの締めくくりに、我々の友人のビル・オーバーホルトが米戦略国際問題研究所(CSIS)太平洋フォーラムのニューズレター「PacNet」に寄稿したコラムから詳細を引用する。現在はマサチューセッツ工科大学(MIT)教授だが、長年、シンクタンクであるランド研究所のアナリストであり、日本の大手投資会社の香港代表も務めた人物だ。

 ビルの寄稿は、日本が今経験している悲劇に潜む「好機」について論じている。我々が本稿のまとめでこれを引用するのは、今回の悲劇が継続的な日本の政治・経済改革のプロセスを推し進めるのに役立つかどうか、役立つとすれば、どのように役立つのか、という将来の議論の「予告編」となることを望んでのことだ。

 「日本の倦怠(感)は不要である。韓国はそれ以上に深刻な問題を抱えている。人口動態の悪化、1990年代の金融危機、北朝鮮からの安全保障上の脅威といったものだ。しかし、韓国はグローバル化し、女性が自由に働けるようにし、以前より労働移動を認め、金融改革と国内競争を促進し、有権者に本当の政策の選択肢を与える民主主義を生み出した。その結果、日本が成長しない時に韓国は成長する。サムスンや大韓航空のような韓国企業がソニーや日本航空(JAL)を打ち負かしており、韓国は日本に取って代わって米国のお気に入りのアジア同盟国となった。2015年までに、韓国人は購買力で日本人よりも豊かになる」

 「原発危機の核心である東電は、勇敢なエンジニアの存在にもかかわらず、政治的に甘やかされた企業が日本の病を招く様子を体現している。もし東電を日本の問題の典型と見なすのであれば、原発危機は再生を引き起こせるだろう。再び焦点を合わせた日本は、その優れた教育と優れた技術、優れた企業と優れた礼節をもってして、高齢化してはいるが、成長する社会をどうマネージしていくかを世界に教えることができる。日本は再び、インスピレーションを与えられるのだ。

 そのためには、日本は競争を促し、中国がやったように貿易と投資に対して自国経済を開放し、韓国がやったように女性を自由にし、一定の労働移動を許可し、建設業、農業、郵便網向けの無駄な補助金を抑制し、不動産市場を自由化し、所得収支を企業から消費者へシフトさせなければならない。

 日本がそれを達成するためには、成熟はしていてもダイナミックな日本に関する前向きなビジョンを打ち出せる指導者が必要だ。そして、そうした指導者を支えるために、日本国民は心底怒り、大きな利益集団が部分的にしか合法でない巨額の資金を使って両方の主要政党を攻略したようなやり方を法的に禁止する必要がある。

 もし日本国民が原発危機を再構築の引き金として使わなければ、今後2~3年内に国債市場の崩壊が、代わりにその仕事をやるだろう。そのような危機がもたらす苦痛は、さほど劇的でないが、より広く蔓延し、より長続きする。それよりは今すぐ、今日見られる類稀な英雄的な行為の一部を再構築に向けた方がいい」


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