中島恵の「中国最新トレンド事情」

2018年6月19日

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中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)『日本の「中国人」社会』(日本経済新聞出版社)などがある。

ちょっとしたひまつぶしや息抜きに

 日本では「1人カラオケ」というと、「カラオケの練習のため」「誰にも気兼ねなく、思いっきり歌えるから」というイメージがあるが、いずれもわざわざ「今日はカラオケに行こう」と思って入店するのが普通だろう。しかし、中国の無人カラオケボックスの場合、すきま時間にちょっと楽しむ、という使い方をする人が多い。いわゆるカラオケ店のように、飲み物や食べ物はなく、部屋も狭いため、そこに長時間滞在する人は少ない。上海在住の知人によると「利用は長くても30分までという人が多いのではないか。椅子も小さいし。映画の上映前の時間や、ショッピングの合い間など、ちょっとしたひまつぶしや息抜きのために、ふらっと利用する人が多い」という。

カラオケを楽しむ若い中国人女性も多い

 確かに、無人カラオケボックスの設置場所は、前述したようにショッピングセンターの中や、映画館の脇、地下鉄駅の付近など、「何かのついでに立ち寄る」的な雰囲気のところに多い。わざわざ「カラオケ店に行く」のではなく、通りすがりに「あ、見つけた。じゃあ、せっかくだから、ちょっと歌ってみるか」という感じなのだ。

 前述した女性は、友だちと一緒に利用すると話していたが、彼女の場合、中国の歌だけでなく、日本語や韓国語の歌もよく歌うそうで、モニターにミュージックビデオが映るため「歌いやすい」と話す。狭さゆえだろうか、「自分ひとりの歌の世界に浸りやすく、ヘッドホンをつけるのも歌手になったような気分を満喫できる」(上海の知人)と好評だ。

 日本のカラオケは90年代半ばから徐々に市場が縮小していき、近年は横バイ傾向といわれる。若者のカラオケ離れや人口減少の影響もあり、今後、市場の見通しは明るいとはいえないが、一方の中国でも、娯楽の多様化などにより、いわゆる大型のカラオケ店は増える傾向ではない。しかし、「中国ミニカラオケ産業白書」によると、17年の売上高は約35億元(約600億円)で、19年には約140億元(約2400億円)に増加する見通しで、カラオケボックスのほうは好調だ。

 また、無人カラオケボックスは、17年ごろから急増している無人コンビニ、無人レストランなどと同様、スマホ決済で利用できる無人市場のひとつとみなされているが、無人店舗の市場規模は2022年には約9500憶元(約16兆円)と、18年の30倍にも増加する見込みだ。人手不足や人件費の高騰、利便性などの理由により増え続ける中国の無人店舗。カラオケボックスは予想外のダークホースといえるが、今後、カラオケのほかにも、意外なものが無人店舗化していく時代に入っていくのかもしれない。
 

  
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