2022年11月30日(水)

WEDGE REPORT

2018年6月20日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

大統領、過去にも「心変わり」

 もうひとつ、考えておかなければならないのは、大統領が自ら表明した米韓合同軍事演習、在韓米軍縮小について、心変わりする可能性だ。

 米韓両国は6月19日、2カ月後に予定されていた合同軍事演習を中止すると発表した。トランプ氏の指示を受けての決定だが、韓国の文在寅大統領は、演習中止について、当初は「慎重に検討していく」(6月14日の国家安全保障会議)との考えを表明していたし、安倍首相も合同演習、在韓米軍縮小いずれについても、これまで通りが望ましいという見方を示唆(6月16日、読売テレビの番組)していた。小野寺五典防衛相は「アジアの安全保障に重要な役割をもっている」と、明確に中止への懸念を示している。(6月13日、防衛省で記者団に)

 在韓米軍縮小、合同演習中止は多額の予算支出を嫌うトランプ大統領の持論だが、発言に一貫性を欠く大統領が、ペンタゴン(国防総省)の進言、同盟国からの懸念表明を受けて、前言を翻す可能性は、米国内でもとりざたされている。今回の中止決定発表が、毎春の定例演習については「未定」としていることや、米議会の〝身内〟、共和党の重鎮、マケイン上院議員が演習中止について、「間違いだった」と批判していることなども、こうした観測の一因をなしている。大統領は2018年4月、シリアからの米軍撤退を指示しながら、国家安全保障チームの反対にあって、数日後にその方針を取り消している。今回も同じ事態に至らないとも限らない。

 そういう事態になれば、北朝鮮に核放棄サボタージュへの口実を与えることになる。米内外からの批判の矛先は金正恩ではなく、トランプ大統領に向けられるだろう。6月19日に金正恩委員長の3回目の訪中を発表し、北朝鮮の後ろ盾としての存在感をますます高めた中国が乗り出し、米国非難を強め、独自に制裁の解除に踏み切る可能性もでてくるだろう。中国は、首脳会談の直後から制裁緩和を主張しているが、実際に踏み切れば、貿易摩擦の激化と相まって、米中関係にいっそうの緊張をもたらす。北朝鮮の核問題に関与してやはり自国の存在感を誇示したいロシアも中国に同調するのは間違いなく、事態は複雑さを増す。

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