2024年11月22日(金)

解体 ロシア外交

2011年4月26日

 また、ロシアは原発の建設や燃料供給などで多くの諸国を支援しているが(日本も支援を受けている。たとえば、ロシア企業テフスナブエクスポルト(テネックス)は福島原発の1、2、4号機の燃料として、低濃縮ウランを今年から2017年まで納入する契約を東電と結んでいた)、それらも全て継続される模様である。

 震災後、プーチン首相はベラルーシのルカシェンコ大統領と、メドヴェージェフ大統領はトルコのエルドアン首相と会談し、両国に対するロシアの原発建設計画の続行を約束した。ロシアは、ベトナム、イランなど多くの諸外国での原発計画についても継続的に支援していく予定であり、4月14日に開催された中国、ブラジル、ロシア、インドに南アフリカを加えた新興5カ国(BRICS)首脳会議でも、原発での協力を引き続き強化していくことが約束された。

 ロシアは今後、日本のものより事故防止レベルがはるかに高い、最新鋭の原発を自国にも諸外国にも建設していくと述べている。

ロシア国民の間では一定の混乱

 一方、ロシア非常事態省は、3月14日に日本の原発事故がさらに拡大した場合に備え、各省庁間、原発関連企業や研究所等の連絡や調整など指揮命令系統を中心としたシミュレーション訓練を実施したほか、日本に近い極東の住民の避難対策についても検討し、太平洋艦隊の艦船や軍の輸送機などを即時に利用できるよう準備を行った。事態が深刻化し、住民の緊急避難が必要となった場合には、船舶9隻、航空機やヘリコプター15機、バスやトラック210台以上によって対応することとなっている。

 このように、ロシアに混乱が及ばないような対策を早々に講じていたのである。

 そして、3月19日にはロシアの国内原子力発電所を運営している国営企業ロスエネルゴアトムのアスモロフ第一副社長が、日本での状況視察を終えて帰国し、プーチン首相に状況を説明した。アスモロフ氏は、福島原発は完全に統制されており、破滅的な状況にはならないと報告し、翌日にはロスアトムのキリエンコ総裁も同様の見解をテレビインタビューで発表し、国民を安心させようとした。

 そして、3月15日から日本からの渡航者、貨物、船舶、航空機、国際郵便に対する放射線量の検査が強化され、ロシアのテレビの一部は、沿海地方の放送で、放射線量の測定値をコマーシャルの間も含め、常時表示するようになった。16日からはロシア非常事態省のウェブサイトでユジノサハリンスクに設置された放射線測定機器を生中継するサービスを始めた。

 だが、極東を中心にロシア住民は福島原発の事故後、不安を募らせている。極東ではモスクワやロシア西部に避難する動きが見られただけでなく、安定ヨウ素剤や放射線測定器に加え、海藻、赤ワイン、ウオッカのまとめ買いが見られるようになった。海藻に含まれるヨウ素や赤ワインに含まれるタンニンが、放射能による被害を抑えられると考えられているためだ。ウオッカについては、放射能予防になるという噂が広まったことで、やはり買い占めの対象になったようだ。

 3月18日~21日に実施された世論調査によれば、ロシアでは原発の推進・維持を支持する回答が54%となり、前年比20%ダウン、原発縮小・廃止を支持する回答は40%で昨年から26%アップしており、国民の間では原発に対する恐怖心が高まっていると言える。また、3月26日、27日に行われたロシアの世論調査では、福島原発事故をロシアにとっての脅威と見る回答は68%に及んだ。


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