2018会計年度においては、下院が、空軍内部の組織として「宇宙部隊」を組織すべしという条項を盛り込んだ国防授権法案を通したのに対し、上院では「宇宙部隊」を独立させるべきではないという法案を通した。両院調整段階では独立は成立せず、今年中に国防総省が「宇宙軍」独立のための研究とロードマップの策定をするということで妥協した経緯がある。
こうした状況にトランプが業を煮やして今回の指示発表ということになったようである。トランプの発言は、研究とロードマップ作製の作業をより加速させることになろう。しかし、マティス国防長官は、「宇宙軍」の創設について、法制化や綿密な計画が必要で時間と労力がかかるとしている。宇宙の戦略的・戦術的重要性、限られたリソースなどを総合的に勘案して、ベストの解を導きだすには慎重に取り組む必要があると思われる。ただ、癇癪持ちのトランプが、米軍の宇宙への取り組みを加速させることになるのか、かえって混乱させるのか、不安な面がある。
なお、日本の宇宙について考察すると、民生利用者が大きな権限を持っており、安全保障面での取り組みは依然として小さい。自衛隊は今年からようやく、シュリーバー演習という米戦略軍主催の多国間机上演習に公式参加できるようになったが、米側には「日本側には宇宙の軍事活動についてきちんと議論できる人が少なすぎる」という不満があるという。米国の「宇宙軍」創設問題と直接関係があるわけではないが、これを良い機会に、日本でも宇宙の安全保障における利用に関する省庁間協力を加速させ、防衛省に予算と人材をしっかり手当てすることが求められているのではないだろうか。
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