2022年8月9日(火)

ちょっと寄り道うまいもの

2011年5月6日

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 一つには瀬戸内の雨の少ない気候。『古事記』の時代から、塩が作られていて、名産だった。味噌の原料の一つである麦も、讃岐うどんで分かるようにこの地域の産物である(素麺が名高いのも、この理由による)。オリーブも、この気候風土ゆえである。明治時代に栽培が始まり、すでに100年を越える歴史を持っている。ゴマはいうまでもなく、さらに古く遡る歴史がある。

 そして、もうひとつの理由が、瀬戸内の海上交通。江戸時代にも九州の大豆が船で運ばれていた。その交易路だったということだ。

 というわけで、醤油の材料、塩と小麦と大豆がこの地で出合い、島を支える産業となった。製品も船で容易に大消費地に送られた。一時は400を超える醤油蔵があったし、今でも19の蔵がある。人口3万ほどの島に。

 真里で試して、特に気に入った醤油の生産者を訪ねた。じつは、料理研究家の友人に、小豆島に行くなら訪ねなさいと勧められていたのも、そこだった。

 ヤマヒサ、という会社である。

 無農薬有機栽培などの、真っ当な材料に徹したところと聞いていたものだから、登録有形文化財だという蔵を見ては、唸る。

 大豆と小麦と塩と麹が出合う工程は、普通の工場と大差ない。働いているのは、機械である。「?」と思うが、モロミが発酵を重ねている蔵に入り、納得する。旨みを作る菌が住み着いているのだと実感する、歴史を重ねた荘厳なほどの美しさ。

 案内してくれた、社長の植松勝太郎さんに聞くと、機械の力を借りた方が良いところは新しい技術を受け入れるが、麹や菌、そして時間の働きなど、昔ながらがよろしい部分はそれを守っているという。合理的に、真っ当なものを作っていると、何より、味で分かる。上品に丸く、優しい旨さをたたえた醤油が語る。醤油はなんとまあ、よく出来た調味料なのだと改めて思わせる。

 ヤマヒサはオリーブ油も作っている。無農薬で栽培から手がけて、油のみならず、その葉でお茶まで作っている。

 そのお茶も、オリーブ油に慣れ親しんだ人間には、すぐにそれと分かる風味、ほのかに残る刺激が好ましく、微笑を誘うものである。が、それ以上にオリーブ油が素晴らしい。

 国産ワインの中に、国際的なレベルでなおかつ、日本のものと実感出来るものが出てきていることと、同じことを感じる。

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