2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2018年8月28日

一貫性の欠如

 ロシア疑惑と口止め料に関するトランプ大統領の説明は、明らかに一貫性に欠けています。

 当初トランプ大統領は、選挙期間にトランプタワーで行われたジュニア氏らとロシア人弁護士らとの面会の議題は、ロシア人の子供の「養子縁組制度」であったと説明していました。ところがトランプ氏は8月5日、ツイッターの中でヒラリー・クリントン元国務長官に関する不利な情報をロシアから入手することが目的であったと認めたのです。トランプ氏は嘘をついていたことになります。

 同様に、口止め料についても嘘を言っていたのです。トランプ大統領は4月5日、大統領専用機内で口止め料の存在の有無に関する記者団の質問に対して、「知らない」と回答しました。しかし、コーエン被告が有罪を認めると、FOXニュースの同番組の中で「後になって知った」と答えました。「コーエン氏が口止め料を支払った後で知った」という意味です。

 いずれにしても、トランプ氏は口止め料について「知っていた」ということです。ホワイトハウスの記者団は、トランプ大統領が米国民に嘘をついたのではないかと追及を強めています。

ジュリアーニ氏の「真実」とは

 では、トランプ大統領の弁護士チームを率いる元ニューヨーク市長ルディ・ジュリアーニ氏はどのような議論をして、自分たちに有利な状況を作ろうとしているのでしょうか。

 ジュリアーニ氏は、8月19日に放送された米NBCテレビの政治番組「ミート・ザ・プレス」の中で、「真実は真実ではない」と主張しました。まったく信じ難い発言です。

 ジュリアーニ氏は「相手バージョンの真実が存在する」と語り、「誰かの真実は自分の真実とは異なる」と議論したのです。仮にそうであるならば、「真実は1つではなく複数存在する」ことになります。また、「真実は絶対的ではなく相対的である」という意味にもなります。

 ホワイトハウスで上級顧問を務めるケリーアン・コンウェイ氏も17年1月22日、米NBCの同政治番組の中で「もう一つの真実」という言葉を使い、非難を浴びました。『「ナイフで何回も刺される方が、銃で殺されるより苦痛なんだ」トランプ支持者の心に響く殺し文句』で紹介したトランプ支持者のQアノンは、匿名で陰謀論を投稿し、現実に対する「もう一つの現実」を提示しています。

 ジュリアーニ氏、コンウェイ氏及びQアノンは、真実、現実及び事象を歪める政治手法によって有権者の意識操作を行い、トランプ大統領を擁護しています。主要メディアを「フェイク(偽)ニュース」と決め付けているトランプ氏自身も、「あなたが見たり読んだりしていることは、実際に起こっていることではない」とツイッターに投稿し、もう一つの真実に訴えています。これらは、極めて危険な政治手法であると言わざるを得ません。


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