中間選挙への影響
マナフォート・コーエン両氏の有罪は、11月6日に投票が行われる中間選挙にどのような影響をもたらすのでしょうか。
第1に、ロシアのハッキングが一層活発になる可能性があります。中間選挙で不利な状況に置かれたトランプ大統領を援護射撃しようと、同大統領が重点州と位置付けている中西部ノースダコタ州、インディアナ州及び南部ウエストバージニア州の3州における上院選で、ロシアがサイバー攻撃を仕掛けてくる可能性は否定できません。ロシアはすでに、ウラジーミル・プーチン露大統領に批判的でクリントン元国務長官に近い関係にあるクレア・マカスキル上院議員(民主党・ミズーリ州)を落選させようと、同議員の事務所にハッキングを試みました。
第2に、野党民主党は与党共和党に対する攻撃材料を得ました。トランプ大統領の地盤で戦う現職の民主党上院議員は、同大統領に対する直接的な攻撃を避けるかもしれませんが、大抵の民主党候補はトランプ大統領とコーエン被告に共謀者のレッテルを貼るでしょう。
ウォーターゲート事件の元検事は、トランプ氏を「起訴されない共犯者」と表現しました。といのは、米司法省の見解では現職大統領は刑事訴追されないからです。そうは言っても、民主党にとって今回の中間選挙は、トランプ弾劾の世論形成を図る絶好の機会になりました。
第3に、中間選挙投票日の直前にコーエン被告による爆弾発言があるか否かです。コーエン被告の弁護士は、「コーエン氏はトランプ大統領の恩赦を受け入れる意思はない」と述べ、同大統領との全面対決の姿勢をみせています。
仮に投票日直前に、コーエン被告が16年米大統領選挙に関して「トランプ大統領はロシアのハッキングを事前に把握しており、トランプ陣営はロシアとコーディネートしていた」と証言すれば、選挙結果に多大な影響を及ぼすことは間違いありません。
モラー特別検察官のジレンマ
もしモラー特別検察官がコーエン被告の爆弾発言を投票日直前に発表した場合、同検察官は共和党から「不公平だ」と非難を受けるでしょう。逆に発表しなければ、民主党から同様の批判を浴びることになります。
従って16年米大統領選挙の投票日直前に、クリントン元国務長官の私的メール問題に関する再捜査開始を発表したジェームズ・コミー前FBI長官と類似したジレンマを、モラー特別検察官も抱えるかもしれません。そうなると、モラー氏の判断が中間選挙の結果を左右することにもなりかねません。
トランプ大統領の側近2人の有罪により、モラー特別検察官のチームは勢いを得ました。モラー氏は、コーエン被告がロシア疑惑に関する重要な情報を握っているとみています。結局、トランプ氏の不倫関係にあった女性に対する口止め料がきっかけになって、ロシア疑惑解明の突破口が見えてきました。
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