機能性表示食品は「認可」ではなく「届け出」でよい
前項のトクホに関しては、容易に推察できるだろうが、条件をクリアするために多大なエネルギー(時間や人手や経費等々)を必要とする。
そのため、トクホの条件を確保できるのは大手企業に限定される。
そこで登場したのが「機能性表示食品」。
「機能性を表示することができる条件」をトクホに比べて大幅に緩和した食品だ。
その当該商品を使ったヒト研究をする必要がなく(もちろん、してもいい)、効果が証明されている成分を含んでいれば、その旨を表示してもかまわない。
その効果というのは「一定以上のレベルをクリアした論文」があればいい。
さらに、トクホとの大きな違いがある。
それは、トクホは厚生労働省の「認可」が必要だが、機能性表示食品は「認可」を得る必要はなく、厚生労働省に「届け出」をすればOKという点。
誤解を恐れずにいえば、書類が滞りなく整っていれば届け出は受理される、つまり機能性表示をすることができる、といえよう。
機能性表示食品は、そこに「表示してある効果」が「その商品を用いて」確かめられてあるわけではない。
このことは「ウソつき表示」ではないにしても、「かなり誤解を与える表示」であると筆者には感ずるのだが、みなさんはどうだろうか?
自分の食習慣に悪影響を“与えない”のは、どっち?
さて、先ほど「個別の商品ごとにヒト研究をしてある」と書いたトクホだが、問題点もある。
たとえば、「ものすごく太っている人を対象にして、ごくわずかな減量効果が確認された」商品を、あたかも「太り気味の人が利用するとめざましい減量効果がる」かのような宣伝がしてあったりする。
もっともらしく棒グラフなどが添えてあるのだが、詳細な条件を書いてはない。
読む人・見る人が、かってに「自分にもあてはまる」と誤解して購入する。
それでも「食べないよりはいいのでは?」と考える人があるかもしれない。
しかしそれに対しては、百歩譲っても「YES」とはいいかねる。
それは、間違った情報(宣伝)を元にしてトクホを利用すると、その人は「正しい食生活から遠ざかる」ことになるからだ。
つまり、科学的には「バランスよく」「適量」の食事をすることが健康によい生活習慣であることは明らかである。
そして本人も(けっして充分ではなくとも)多少はその努力をしているはずなのに、効きもしない健康食品を食べることが理由になって、健康によい生活習慣がおろそかになる。
千歩譲って、その健康食品がごくわずかに効いたとしても、生活習慣が「健康に好ましくない方向」へと変わってしまったら、そのわずかな効き目は帳消しになるどころかむしろマイナスになるだろう。
そのため本来は「健康食品などに頼らず、バランスよく・適量の食事を、規則正しく食べる」のが健康長寿への近道である。
しかしそんな正論だけを言っていても、それを日常的に実行できるビジネスパーソンは少なかろう。
次善策として、機能性表示食品やトクホを利用するなら、以下のことを頭に刻んでおこう。
「自分の健康にとって好ましい食生活=適量をバランスよく食べる」に与える影響が少ない健康食品を選択すること!
たとえば、
1:食事の際には「糖と脂肪の吸収を抑えるお茶」(トクホ)を飲むようにしているから、大好きな揚げ物の量を増やしても大丈夫。
2:外食が多くて食物繊維が不足しがちだから、「お通じの習慣を改善するお茶」(機能性表示食品)を利用しよう。
という2つなら、「1」はNGだけど「2」はOK。
くどいようだが、「1」の場合でも「2」の場合でも、「食生活は主食・主菜・副菜を基本に食事のバランスが大事」(トクホにも機能性表示食品にも必ず書いてある)という基本を守ることが大前提であることを、けっして忘れることのないように!
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