本館の古い建物を出ると、さらに本館の新しい増築部分がつづく。コレクションはその後ふくらんでいるのだ。美術館は孫三郎から、戦後は長男大原總一郎に引き継がれる。總一郎は孫三郎の精神をさらに積極的に拡大し「美術館は単なる倉庫ではなく、常に生きて成長するもの」という理念で、積極的に蒐集をつづける。フォートリエ、ジャコメッティ、マチュウ、タピエス、ヴォルス、デュビュッフェ、フォンタナ、ポロック、さらにラウシェンバーグ、ジャスパー、ウォーホール、リキテンスタインと、まだまだつづく。
ポール・ゴーギャン 「かぐわしき大地」
1892年 油彩
1892年 油彩
孫三郎の時代には「進取の気に富む人を応援する」ということでよかったが、価値観が圧倒的に多様化した現代では、コレクションもいろんな意味で難しいことだろう。
そういう拡大した本館が終ると、庭を挟んで分館があり、そこには近代からの日本の作品が展示されている。それが終るとまた戻って、本館の横に古い倉を応用した工芸・東洋館がある。孫三郎は柳宗悦〔やなぎむねよし〕たちの民芸運動も応援していて、東京駒場にある日本民藝館も、孫三郎の出資によって建てられている。
なお大原コレクションに尽力した児島虎次郎の記念館が、川を挟んだ倉敷アイビースクエアの中に設立されている。
(写真:川上尚見)