2024年7月15日(月)

Washington Files

2018年9月25日

「ベルリンの壁」、「万里の長城」をも上回る現代史上最大規模の人工壁

 今年1月までの時点で明らかにされたところによると、その全長は約2000キロ、高さは場所によって異なるものの平均12メートル前後で、完成後には全域をカバーするパトロール要員1万人、出入国管理官5000人の追加投入が必要となる。

 ちなみに「万里の長城」の場合、現存する人工壁としては総延長約6200キロでアメリカ版の3倍近くもあり、世界最長を誇っているが、高さは平均7.8メートルだ。

 いずれにしてもアメリカ版は、高さにおいてイスラエルとヨルダン川西岸の壁(8メートル)、東西冷戦時代の「ベルリンの壁」(3.6メートル)、そして「万里の長城」をも上回る現代史上最大規模の人工壁となることには変わりはない。

 トランプ大統領は去る3月、民間業者6社が試作した見本壁8点を視察のため、カリフォルニア州サンディエゴのメキシコ国境地帯を訪れ「このような立派な壁が全域に張り巡らされるまではアメリカという国は存在しない」と記者団に語り、改めて構想実現の意義を強調した。

 これを受けて5月から国境警備隊サンディエゴ支部管轄下の約100キロ、同州カレヒコ地域の約4キロ、ニューメキシコ州サンタテレサ地域の約32キロの一部のとりあえず3か所を優先的に建設工事がスタートした。このうちとくにサンディエゴ管轄地域は全米で最も不法入国者が多く、昨年1年間だけでも2万6000人が国境警備隊に検挙された悪名高き国境地帯として知られている。

 ただ、今後この壮大な国境壁が日の目を見るまでには、数多くの難題が立ちはだかっていることも否めない。

 そのひとつに、工事で影響を受ける土地所有権をめぐる関係地方自治体、個人所有者たちとの訴訟問題がある。

 ニューズウィーク誌の報道によると、国有地以外で工事の対象地域となる個人所有地および州保有地は全体の3分の2を占めており、実際に壁完成のためにどれだけの土地収用費用が必要となるかは、今後の交渉次第にかかっているという。このためトランプ・ホワイトハウスはすでに土地収用問題を担当する専任弁護士12人と契約済みで、本格訴訟も辞さない構えだ。

 第2に、クリアすべき法規制の問題がある。

 カリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス4州にまたがる「国境壁」対象地域には「希少動植物保護法」「国家環境政策法」「歴史的史跡保護法」「水質保全法」など30本以上の現行法が施行され、さまざまな規制がかけられているため、計画推進のためにはそのひとつひとつについて法改正するか、大統領命令による「適用除外措置」を講じる必要がある。

 去る2010年には、国土安全保障省がアリゾナ州の一部地域で法規制を迂回する行政措置で突破を試みたが、地元民が反対を表明、最高裁での「違憲判決」の結果、フェンス工事差し止めとなったケースもあった。

 しかし、こうしたハードル以上に深刻なのが、今後の工事関連費用、必要維持費などの予算問題だ。

 今のところ、大統領は建設のための総コストを120億ドルと見込んでいるが、正確な費用見積もりはできておらず、実際には土地収用なども含めると200億ドル~300億ドルに達するとの見方もある。これに対し、とりあえず連邦議会とくに上院で承認ずみの予算は16億ドルにすぎない。


新着記事

»もっと見る