でも、この視点を忘れると、一つやってうまくいかなければ、すぐまた別のやり方に飛びつくという具合に、あれもこれもやろうとする間違いに陥ってしまいます。まじめな人ほど、子育てで失敗したくないという思いが強く、その傾向があるように思います。
すると、子どもは混乱するばかりか、結局、何一つ努力した証が手に入らないということにもなりかねません。自分の努力の証がなければやる気も出ませんし、親の思いのままに振り回されれば、やがては親の言うままに行動するクセがついてしまいます。
それでは、子どもの自主性は育っていきません。
これ、部下を持つ方の悩みベスト10に常に登場する、「指示待ち族」問題そのものです。
その“困っている”は、誰が困っているのか?
では、たくさんの情報の中から、何を基準にベストな方法を見つけていけばよいのでしょうか?
それには、次の3つの質問がお役に立ちます。
(1)自分は今、何に困っているのだろう?
(2)子どもは今、何に困っているのだろう?
(3)今すぐ叶えたい目標は何だろう?
詳しく説明していきましょう。
【自分は今、何に困っているのだろう?】
私は長年、中学受験専門の指導者として、受験生の親子とたくさんの面談をしてきました。そこで数多く出会ってきたのが、親が「自分の問題」と「子どもの問題」をごっちゃにしているケースです。
100満点中50点しかとれなかったテストを持参し、「こんな成績をとっていたら、普通なら焦るはずなのに、まったくやる気を見せません。どうしたらいいのでしょう?」と相談にくる親御さんがいます。
この相談は一見、お子さんの相談に見えますが、実は困っているのは親御さんなんですね。
「普通なら焦るはずなのに」
「やる気を見せません」
「どうしたらいのでしょう?」
全部、親の自分が決めたこと、親の自分が困っていることです。
でも、この親御さんは困っているのは自分だ、ということにはお気づきではありません。
何か問題を解決するには、大前提として、目標や目的がはっきりしていることが必要です。
そこが曖昧になっていると、そもそも何が問題なのかも分かりません。
何を目指していて、現状がどうだから、「問題だ」と言えるのかが決まるからです。
何が誰にとって問題なのかがあやふやなら、もちろん、正しい解決策も見つけることはできません。
ですから、まず「自分が困っていること」と「子どもが困っていること」を分けて考える必要があるのです。
親御さんの「困った」の多くは、次の3つが考えられます。
1,何をどうしていいのか分からない
2,自分ならこうするのにできない子どもを見てイライラする
3,やるべきことは見えているのに、時間的に余裕がなくてできない。やるべきことの優先順位が選べない。
まずは「今、自分は何に困っているのだろう?」と考えてみます。「困っている」の裏には「こうして欲しい」「こうなって欲しい」という自分の思いがあるはずです。それが何かを明確にします。