なぜ、こんな価格が実現できたのか?
"e5"は日本で企画されたモデルです。このため日本仕様が入っています。一つは、『排気フィルター』の強化です。ロボット掃除機は、基本「無人」の時に使われます。要するに排気中に、一度吸った細かなチリが出ても、被害が少ないわけです。
しかし、考えて見てください。まず、無人と言うことは、密閉空間で掃除するということです。隅にあったので、健康被害につながらなかったPM2.5などが、生活動線上に落ちる可能性は否定できません。いい排気フィルターを使うと言うことは、2次汚染の問題を最小に抑えることができるということです。
もう一つは「洗えるダストボックス」。中の金属メッシュは外すことができませんが、水洗いできます。担当者が「日本人はキレイ好き!」と何度も連呼していましたが、これは重要です。
これ以外のパーツは、色こそ違え、基本890と同じです。890は、iRobotの主力モデルで、かなりの台数が販売されたと聞いています。メーカー勤めをした人ならピンと来ますね。パーツの共通化はコストダウンの有益な手法です。
そしてもう一つ重要なことは、iRobot社のロボット掃除機の技術は、980を発表した時点で完成していることです。より小型化などやることがないわけではありませんが、CEOのコリン・アングル氏は、ルンバの開発から手を引き、今はスマート・ハウスの開発をしています。
つまり、今回の”e5”は、完成された技術を、マーケティング情報を使い、再編成した結果とも言えます。そう、"e5"は、日本人好みの上、性能も上々。しかもお買い得価格と、種々の条件が揃ったモデルなのです。
強迫観念に駆られるように、新しい機構を開発し続ける日本メーカーに対し、iRobotは技術で引っ張るところ、マーケティングで引っ張るところを明確に分けたわけです。これはスティック型掃除機で日本メーカーよりシェアを持つ英ダイソン社にも言えることです。
商品開発は先に技術ありきです。が、ある程度技術が確立すると、技術からマーケティングに商品開発はバトンタッチされます。今回の”e5”は典型的な例です。
2023年 日本全世帯普及率:10%を目指す
アイロボットJは、2023年、今から5年後、今のほぼ倍の普及率、日本全世帯普及率:10%を目指すそうです。そして最終的には『1家に1台』。
“e5”はそのための戦略的なモデルですが、その力を持っていると思います。あとは、日本の眼が肥えたユーザーに、どうアピールするかです。確かに、日本メーカーはかなりいいロボット掃除機を上市しています。しかし、まだまだ高いです。普及価格帯もラインナップはされてもいますが、アイロボットほど練られてはいません。
パナソニック「ルーロ」、日立「ミニマル」、シャープ「ココロボ」など、それぞれ個性的ではありますが、まだ、アイロボットと四つに組んで頑張れるかというと、まだ時間がかかる気がします。ただ、2~3社で、競り合わないと、ユーザーが「ドキドキ」するような市場にはならないのも事実です。
今回の"e5"、アイロボットJにひどく感心すると共に、もう一つ思ったのは、日本メーカーに頑張って欲しいということでした。とりあえず、皆様には、"e5"は「とてもお買い得モデルだ」と言うことを、報告させていただきます。