2024年12月23日(月)

家電口論

2018年10月13日

アイロボットの新モデル「e5」。今回、市場データーを元に作られた戦略モデル。
アイロボットJが今回発表した"e5"は、『高級モデル』から『普及価格帯モデル』へのリファインです。890モデルをリファインした後継機種として開発されました。で、価格は、約3万円値下げの4万9880円。まさに勝負モデル。「とびっきりのお買い得モデル」と言える。戦略機種を登場させ、市場どう変えるのか?

 iRobot社(米国)の"ルンバ"。言わずと知れたロボット掃除機の雄です。ロボット掃除機の世界市場は、掃除機市場の10%を上回り、今後も伸び続ける見込み。特に、お膝元アメリカでは、ある時期、全種類の掃除機の中でルンバがトップを取ったそうですから、やはりすごいと言わざるを得ません。

 日本では共働きの三種の神器、『(ドラム型)洗濯乾燥機』『食洗機』『ロボット掃除機』の中に含まれるロボット掃除機ですが、日本での全世帯普及率は、4.5%。世界水準の1/2以下。日本での食洗機の全世帯普及率約30%にも遠く及びません。

 これを子どもがいる共働き夫婦に限ると、17.3%。一挙に数が増えます。ペットがいる家庭だと20%以上と、使い方が明確になるほど普及率は上がりますが、米国に及びません。なぜでしょうか?

日本の共働き世帯がロボット掃除機を買うのに躊躇する理由

 アイロボットジャパン合同社(以下 アイロボットJ)は、このことを徹底的に調査しました。その結果、得られた理由は、

  1. 確実に掃除できるのか、不安
  2. 価格が高い

の2つでした。

 何となく分かりますね。また日本人の場合、隣(他人)が持っていると買っちゃうという傾向があります。

 このため、あるレベル(多くの場合、8~10%。ちなみに、8%を切るとマーケティングでは店頭認知がされないモデルとされます)を越すと、一気に普及します。ここら辺は、欧米とでも似た傾向は出ますが、より顕著に出ます。

 価格の分岐は多くの場合、5万円を切る、切らないとなります。

 例えばデジカメは、5万円を切った瞬間、爆発的に普及しました。5万円というのは、衝動買いの上限と言うことも言えますし、背伸びして買う上限という言い方も可能ですが、5万円を切ると急に手が届く感じがしますよね。

中級機種 890がベース

 多くの場合、家電のラインナップは、四つのモデルから成り立ちます。「フラッグシップ」「高級モデル」「中級モデル(定番モデル)」「普及価格帯モデル」です。

 『フラッグシップ』は、全機能付き。ラーメンで言うと全部入りです。全体の5~10%を占めますが、自社の方向性と技術力、商品イメージを一手に引き受けます。メディアへの露出が多いのもこのモデル。なんたって見栄えがしますからね。980(12万5000円(以降、価格はすべて税抜))、960(8万9880円)の2モデルを持つ900シリーズがこれにあたります。

 『高級モデル』は、『フラッグシップ』から一つの機能を抜いたモデル。10~20%を占めることが多いモデルです。ただし価格によっては、売りにくいモデルとなります。

 『中級モデル(定番モデル)』は、価格と機能バランスが取れたモデルです。30%以上が理想ですが、それはバランスが取れているのか、どうかによります。力のあるメーカーは、ここで頑張ります。そうでないと、普及価格帯の割合が増え、利が薄くなります。

 アイロボットの場合、この『高級モデル』『中級モデル』の境が曖昧で、890(6万9880円)、760(7万6000円)、770(6万6480円)が当たります。型番から言うと、『高級機種』890、『中級機種』700シリーズですが、価格を考えると極めて曖昧と言えます。

 そして『普及価格帯モデル』の643シリーズです。価格は、3万9880円。 

 このラインナップに対し、アイロボットJが今回発表した"e5"は、『高級モデル』から『普及価格帯モデル』へのリファインです。具体的には高級モデル890モデルの機能をリファインした後継機種として開発されました。しかし、価格は、なんと 4万9880円。約3万円の値下げです。

 まさに勝負モデル。戦略機種の登場です。「アイロボット史上、最も価格バランスがよい」とはメーカーの言ですが、実際は「とびっきりのお買い得モデル」です。

 結果、フラッグシップは「980」、高級モデル「960」、中級(定番)モデル「e5」、普及価格モデル「643」と、曖昧さのない分かりやすいラインナップになりました。


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