2022年12月10日(土)

Wedge REPORT

2018年10月31日

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松尾康憲 (まつお・やすのり)

ジャーナリスト

1953年生まれ。76年共同通信社入社。87年から2004年まで北京特派員、上海支局長、ハノイ支局長を歴任。現在は放送報道局委員。著書に『現代ベトナム入門 ドイモイが国を変えた』(日中出版)、共訳書に『中国の禁書』(新潮選書)、『性愛の中国史』(徳間書店) 

――「中核機関」というのは、具体的に何なのか。

宇田川:地方自治体が直営する場合の他に、例えば地方自治体が社会福祉協議会(社協)といったところに委託する場合も考えられる。

――例えば国民が認知症の問題を抱え、公的機関に相談に行くときに、最初の窓口はここになるのか、それとも家裁か。

宇田川:最初に行くべきは、その地方の相談窓口と考えられる。今後は、広報機能の充実が重要になってくると考える。

――パートナーとなる専門職後見人とトラブルが起きたときには、ペアを変えるという発想があってもよいのではないか。それが全部そのたびに審判、審判という現状は何とかならないのか。

宇田川:本人との信頼関係や親族後見人との信頼関係がなくなっているような場合は、それで本当に本人のために適切な支援ができるのかというところが問題になってくる。そうした状況についても、本人を近くで見守っているチームを通じた中核機関からの情報提供を受けて、そこで新たな推薦を受けることもあると思う。

――私自身が、成年後見人を体験し報酬も受けたが、報酬算定の根拠も全然知らされない。裁判所は情報開示というか、国民に対する疎明も実践した方がよいのではないか。

宇田川:報酬の問題もおおよその目安を示し、予測可能性を確保するということが大事だと思っている。報酬の在り方についても、考えていくことも大事だと考えている。

――親族後見人の脱法行為、違法行為はもちろん排除しないといけないが、人の心情をくみ取る余裕がある運用でなくて、ガチガチに縛られるとノイローゼになってしまう。

宇田川:これまで財産保全、つまり財産を無駄遣いしないというところがかなり強調されていた面があったが、その認識が変化してきている。本人らしい生活のために、本人の意思を尊重する方向での運用が検討されている。

――成年後見制度というのは高齢化社会の現実において、老いて亡くなっていこうという人を看取るという営為を前提としており、利用例の8割、9割を占めているはずだと思う。ところが、物故する人の葬式とか最期の見送りということを見込んでの制度設計ができていない、大きな欠陥ではないか。

宇田川:制度としてどこまで手当てするのかというところはある。法務省を含めて議論しなくてはいけないと思う。今も専門家会議というのをやっている。本人が最期まで本人らしく、ということで、お葬式も本人らしく、ということが考えられ、本人の生前においてその意思を尊重するような運用も考えられる。

――家裁に対しては、これからの取り組みについて、アドバイスとかしているのか。

宇田川:裁判官は独立して判断を行うものであるが、申し上げたような考え方について、各裁判官がどう考えるかという協議会をやるということもあるし、司法研修所が実施する研修や、裁判官独自での研究会でもどのような運営が望ましいかというようなことを協議している。今後も政府や自治体の動きを踏まえて、最高裁から必要な情報提供をし、具体的な対応方を協議していきたい。

■修正履歴:インタビュー内容の一部を修正しました(編集部:2018/10/31 9:45)

【シリーズ・成年後見制度の影と光】
PART1:家裁に「左遷」された成年後見人
PART2:成年後見パートナー弁護士との泥沼関係
PART3:是正される「専門職」に偏重した成年後見人

  

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