海野素央の Love Trumps Hate

2018年11月2日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

主要な争点

 トランプ大統領は、支持者集会で中間選挙の争点は、移民集団、カバノー連邦最高裁判事及び減税の3つであると、繰り返し強調しています。

トランプ大統領を支持するアリゾナ州の有権者が付けるバッジ(筆者撮影@アリゾナ州メサ)

 日本でも報道されていますが、中米諸国から数千人もの移民集団が徒歩で米国とメキシコの国境を目指して向かっています。トランプ大統領はこの移民集団を「キャラバン」「侵略者」及び「犯罪者」と呼んだうえで、「国家非常事態だ」と語り、支持層の危機感を煽って、中間選挙を有利に展開するために政治利用しています。

 トランプ大統領は、この移民集団の中に「中東の人間が混ざっている」と、根拠を示さずに主張しています。2001年の「米同時多発テロ」で、一部の米国人の間に形成された「中東の人間はテロリストである」というステレオタイプ(固定観念)を活用し、支持者の恐怖心を煽っているのです。  

トランプ大統領のメッセージ(筆者撮影@アリゾナ州メサ)

 同大統領は、移民集団の中に「MS-13」(「『ナイフで何回も刺されるほうが、銃で撃たれるよりも苦痛なんだ』トランプ支持者の心に響く殺し文句」参照)と呼ばれる中米のギャングメンバーもいると言うのです。これに関しても根拠はありません。

 トランプ支持者は、極左が移民集団に資金援助を行っていると批判しています。一方リベラル派は、極右が共和党支持者の熱意を高めるために移民集団を組織化していると非難しています。

 次に、トランプ大統領はカバノー連邦最高裁判事も争点にしています。カバノー氏は無実であるのにもかかわらず、性的暴行疑惑で民主党から不正な扱いを受けたと述べて支持層、殊に同氏と同じ白人男性に訴えています。さらに、中間層向けに10%の減税を行うと約束し、支持獲得を図っています。

 要するにトランプ大統領は、うえの3つを争点にして民主党との熱意のギャップを埋めようとしているのです。

トランプの行動原理

「米国を再び偉大に取り戻す」の字句が入った赤い帽子と「暴徒ではなく雇用」のTシャツを着用したトランプ支持者(筆者撮影@アリゾナ州メサ)

 この夏のトランプ大統領の言動を注視すると、政策における同大統領の行動原理が明白になりました。トランプ氏は2回目の米朝首脳会談開催よりも、性的暴行疑惑の渦中にあったカバノー氏の連邦最高裁判事承認を米議会から得ることに、より多くの時間を割いていました。その結果、わずか任期2年目で、すでに2人の判事を連邦最高裁に送ることができました。     

 同時に、同大統領は中間選挙における共和党候補の選挙応援にエネルギーを費やしました。その主たる理由は明白です。上下両院で民主党が多数派を占めると、下院で弾劾の発議が出され、上院で弾劾裁判が開かれる可能性が高まるからです。

 トランプ大統領の行動原理は、一言で言えば、名誉にかかわる身近な課題を最優先するということです。

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