2024年4月17日(水)

World Energy Watch

2018年12月13日

長期目標の理想を掲げるマクロン大統領

 「黄色いベスト」運動の最中11月27日、マクロン大統領はエリゼ宮に閣僚、議員を集め「化石燃料の使用から脱却するエネルギー転換を進め、フランスは2050年までに大気中の二酸化炭素を増加させない、カーボン・ニュートラルになる」と演説した。

 そのため、今年間50億ユーロの投入を行っている再生可能エネルギー支援の公的資金を年間70億から80億ユーロに増額し、2030年までに太陽光発電と風力発電をそれぞれ3倍と5倍にするとしたが、この投入額は炭素税による税収額を意味しているようだ。さらに、原子力の比率を50%にする期限を先送りし、5年間の大統領任期中に閉鎖されるのはフェッセンアイム原発のみであり、2035年までに14基の閉鎖を行う予定と発表した。優先されるのは石炭火力発電所の閉鎖であり、2022年までの閉鎖を明言した。

 大所高所からのエネルギー転換についてスピーチを行ったものの、デモの対象となっている炭素税には直接触れることなく、エネルギー転換には炭素税が必要と暗示した内容だった。長期目標を述べても、目先の燃料価格に抗議する国民の大半の理解を得ることはできなかった。結局、12月4日炭素税引き上げの6カ月延期に追い込まれることになった。

温暖化をどう考えれば良いのか

 マクロン大統領が白旗を挙げ事態は収拾に向かいそうだが、多くのフランス国民が示した意図は被害の程度もわからない温暖化問題という将来の課題のため今税金を取るよりも、国民の生活に配慮をということだったと理解できる。全世界の二酸化炭素排出量の1%にも満たない排出量のフランスが、世界規模の問題に犠牲を払い努力をする意味も国民には分かりにくい。温暖化のもたらす影響が分からない中で、国民に負担を強いる対策をどう進めればよいのだろうか。

 温暖化問題を考える時の一つの方法は、保険の考え方だ。二酸化炭素を主とした温室効果ガスが地球の温暖化を引き起こしていることは、多くのデータから裏付けられている。しかし、将来気温が何度上昇するのか、またその時にどのような影響があるのか、確かなことは分からない。多くのシミュレーションが行われているが、気温上昇予測には大きな幅があり、殆ど気温上昇はないとの結果もある。海面上昇などの予測にも当然幅がある。

 将来が不確実な時に役立つのは、保険の考えだ。私たちは住宅火災に備えて保険をかける。万が一の時には大きな被害が出るからだ。しかし、保険料があまりに高ければ、保険を掛ける人はいなくなる。温暖化問題も同じだ。将来の被害額が不確実な中で、私たちができることは、保険料に相当する金額を温暖化対策に使用することだ。対策の金額があまりに大きければ、私たちは負担することができない。また、保険料は家計の状態によっても支払いが難しくなるかもしれない。

 フランスの炭素税による燃料価格上昇は、保険料としては高くなりすぎたということだ。どこまでの保険金額であれば許されるのか。経済情勢をみながら判断を行うしかない。温暖化問題への取り組みは難しい。

  
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