「メリークリスマス」よりも「ハッピーホリデイズ」
こういうディープなクリスチャンの土地柄に比べると、ニューヨークのクリスマスは色合いがかなり違う。
ニューヨーカーで教会に行ってミサに出る人々はほんのごく一部だけだ。どこのショーウィンドウも豪華なクリスマスの飾り付けで埋まるのだが、宗教的な意味合いよりも商業的クリスマスで、日本のクリスマスに近い。そしてニューヨークでは「メリークリスマス」という表現はあまり使われないことを、ご存知だろうか。
それは、この街が多民族の都市だから。イスラム教徒、ユダヤ教徒など、クリスチャン以外の人たちも、大勢住んでいる。彼らは基本的に、クリスマスはお祝いしない。
相手がクリスチャンなのかどうか定かではない場合は「メリークリスマス」ではなく「ハッピーホリデイズ」という表現が一般的に使われる。
ユダヤのお祭り「ハヌカ」
中でもニューヨークの人口のおよそ13パーセントを占めるといわれるユダヤ人は、クリスマスのお祝いはしない。ユダヤ教徒の彼らは、イエス・キリストは救世主とは認めていないからだ。その代わり、ハヌカと呼ばれる祝日を盛大に祝う。
そもそもハヌカとは、紀元前二世紀に圧制の元におかれていたユダヤ民族が、ギリシア人の支配下からエルサレム神殿を解放した記念の祭日なのだそうだ。9本に枝分かれしたろうそく立ての中央の種火用のキャンドルから、毎日一本ずつ点火して8日間祝う。ユダヤ歴で祝うため、毎年日にちは違うのだが、普段はクリスマス前後。今年は少し早い目で、12月2日から10日までだった。
ユダヤ系の友人のデイビッドいわく、クリスマスというのは、「映画を見て、中華街で外食をする日」なのだという。
24日のイブまではお店もレストランも混むけれど、25日は閉めているところも多い。そんな中で、必ず開いているのは映画館と中華街のレストラン。だからクリスマスにやることがないニューヨーカーのお決まりコースが、この映画館、中華街コースなのだ。
アフリカ系アメリカンのお祭り「クワンザ」
一方、アフリカ系アメリカ人たちは12月26日から1月1日までの7日間、クワンザという祝日を祝う。
これは1966年にカリフォルニア州立の大学教授であったマウラナ・カレンガ博士が提唱して始められた、比較的新しいお祭りだがこのところ急速に浸透してきた。
クワンザとは、スワヒリ語で「初収穫」という意味で、アフリカの収穫祭をお手本にして、アフリカの文化の伝統と誇りを子どもたちに伝えるためのお祭りだという。
自然史博物館などでもイベントが行われるが、子どもたちの合唱や楽器演奏が行われる中で7本のキャンドルが灯されて、彼らの掲げる7つの信条「結成」「自己決定」などがスワヒリ語で読み上げられる。
ちょっと気がきくニューヨーカーなら、黒人の友人へのホリデイの挨拶は「ハッピー・クワンザ!」と声をかける。