爆旅、地の果てに浸透する中国人観光客
しかし、その多くが食べられなかった。主因は、宿泊ホテルであるアークティック(Hotel Arctic)のレストランにあった。ホテル・アークティックのメインダイニング「Restaurant Ulo」のレギュラーメニューを事前確認したところで、上記食材のほとんどが扱われていることで、安心していた。
ところが、チェックインすると、悪いニュースを知らされた――。滞在中の2泊は、「Restaurant Ulo」は中国人団体ツアー客による貸切のため、一般営業を中止するとのこと。青天の霹靂。予約満席なら時間帯をずらすとか、なんとか懇願して入れてもらう手立てがあったかもしれないが、貸し切りだとなす術がない。ルームサービスやカフェで注文を取り寄せることも打診したが、ダメだった。両日ともレストランの厨房は団体の貸切ブッフェしか用意できない。
運がよほど悪かった。と思ったら、そうではないようだ。イルリサット一番の高級ホテル、アークティックはとうに中国人団体ツアー客に「乗っ取られた」ことは、現地で誰もが知っていることだった。そこまで事前調査ができていなかった私自身の責任にほかならない。ホテルの入口に掲示されている総支配人の挨拶文をみてもわかる。英語と中国語がメイン言語として真ん中に併載されている。両側に欧州各国語があっても、日本語はない。
爆買の次は爆旅。その爆旅先ももはやパリやロンドンにとどまらず、北極圏、地の果てまで浸透してきているのだ。ホテルとしては、金を落としてくれる中国人客を優先させるのも当然で、その経営方針は非難されるべきではない。商業的観点からすれば、むしろ正しい経営判断なのだと私は思う。
嗚呼。私の美食夢が無残に打ち破られた。夕食の時間帯、ホテルのメインダイニングは、中国人専用となり、他の客は小さなカフェに追いやられ、限られたメニューから選ばざるを得なかった。
まあ、食事にありつけただけでも幸運だった。