2024年4月17日(水)

Wedge REPORT

2019年1月15日

トランプ氏、ロシア疑惑が深刻

 現職、トランプ大統領、その弾劾の可能性はどうだろう。トランプ氏が弾劾訴追されるとすれば、〝訴因〟は2つ。ひとつは、クリントン氏同様、女性関係だ。

 2016年の大統領選当時、トランプ氏はかつて関係のあったポルノ女優に対して、〝口止め料〟として1400万円を支払ったが、カネの出所が選挙資金からだったと疑われている。事実なら選挙目的以外に使うことを禁じた選挙資金法に抵触する。実際に金を支払った大統領顧問弁護士は、別の事件で禁固3年の判決を受け、口止め料に関しても、「大統領の指示」を認めている。

 大統領は疑惑を一切否定しているが、女性問題に端を発した法律違反の疑いということではクリントン氏のケースと酷似している。

 問題は、「大統領の指示」を検察が立証できるかどうかだ。トランプ疑惑については、FBI(連邦捜査局)の元長官、ムラー特別検察官が現在捜査しており、その結果が待たれるところだ。仮に、大統領の関与が明らかになっても、訴追に値すると議会が判断するかどうかという問題も残る。

 大統領にとって深刻なのは、むしろ〝ロシア・ゲート事件〟だろう、2016年の大統領選の際、ロシアの情報機関が民主党の情報システムに侵入、トランプ氏の対立候補だったクリントン女史に不利になるような電子メールを大量に流出させた。クリントン陣営に打撃になったことから、トランプ陣営がこれに関与、共謀していたのではないかという憶測がなされている。

 にわかに信じがたい疑惑だが、トランプ氏自身は強く否定している。しかし、氏の当選から就任までの間に、側近がロシア側と接触、制裁解除について話し合っていた事実が明らかになり、ロシア疑惑を捜査していたFBIの前長官を大統領が就任後の一昨年5月、突然解任したことなどから、大統領関与の疑惑がくすぶり続けている。

 事実とすれば、トランプ氏にとっては致命傷になるだろう。不倫のもみ消しなどといった次元の問題ではなく、国家安全保障に関わる重大な問題であり、「反逆罪、収賄罪その他の重罪」という弾劾の理由を十分に満たす。

 ムラー特別検察官はもともと、ロシア疑惑を捜査するために任命されたことから、大統領の顧問弁護士の供述などをもとに立証をめざしているとみられるが、状況証拠はあるにせよ物証をどのようにして押さえるか。これまた、捜査報告がまたれるところだ。

弾劾には多くの困難

 クリントン弾劾の際のバード上院議員の言葉、「有罪だが弾劾反対」も忘れるわけにはいかない。

 米国はいま、かつてない激しい分裂状態にある。大統領の政治手法をめぐって、トランプ支持、反トランプ派が対立、国論を2分している。単に政策の違いだけでなく、トランプ氏が人種差別、性差別のような言動を隠そうとしないことから、これらに関して、国民の基本的な価値観をめぐる対立に発展している。

 こうした分裂は、貧富の差の拡大とも相まってトランプ政権発足以前から続いてきたことではあるが、そいう問題を抱えたなかで、トランプ弾劾という事態になったら、国民の間に修復不可能な亀裂が生じるだのは明らかだ。国民の多くは、それを十分に知っている。

 国の分裂回避と疑惑追及の折り合いをどうつけるか。トランプ弾劾など、口で言うほど簡単なことではない。

  
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