神戸駅の特急車両のレストランで調製され、観光列車の車内で販売される弁当が、今回の「トロッコ弁当」である。飾りはないが、分かりやすい名前だ。そのパッケージにも当たり前のように、トロッコ列車の走行写真が印刷されている。ふたが閉まらないくらい中身が詰まっているようで、舞茸の天ぷらの先端が顔をのぞかせている。
たっぷりの舞茸を、必要十分な副菜が脇固め
ふたを開けると、そこは舞茸ワールド。ご飯には舞茸がたっぷり混じり、ご飯に柔らかい香りと食感を与えると共に、適度な歯応えを提供する。さきほど少し見えていた舞茸の天ぷらは、常温なので少し油っぽくは感じるが、惜しげない分量であることが見て取れるし、ザクザクと食べられる。
これにトンカツ、うずら豆、細切昆布、マカロニサラダ、大根なます、オレンジなどの、必要で十分な副菜が脇を固める。渋めでもあり華やかでもある、観光列車のお弁当としてどこから見てもふさわしい姿をしている。
2010年の紅葉シーズンに整理券をなんとか得て、紅葉のトロッコ列車に乗ってみた。大間々駅から足尾駅までの道のりを、ディーゼル機関車に引かれ一時間半以上かけてゆっくりと走る。機関車と窓のある客車はJRの中古車、窓のないトロッコ車両は東京の京王電鉄の通勤電車を改造したという変わり種である。
始発駅を出発したとたんに、舞茸と食用油の臭いが漂ってきた。換気抜群のオープンエア客車なのに、である。周囲を見回すと、確かにどの団体客もこのトロッコ弁当を予約していた。2009(平成21)年12月に登場した豚丼駅弁「やまと豚弁当」という新作もあるが、先輩の人気は不動であった。観光列車の楽しさを彩り、旅の印象を深める秀逸な駅弁が、ここにある。
福岡健一さんが運営するウェブサイト「駅弁資料館」はこちら
⇒ http://eki-ben.web.infoseek.co.jp/
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