2024年4月20日(土)

Washington Files

2019年1月21日

『ドナルド・トランプの弾劾を!(Impeach Donald Trump)』

 一方、米有力月刊誌「アトランテイック」は3月発売予定の最新号に『ドナルド・トランプの弾劾を!(Impeach Donald Trump)』と題する異例の巻頭論文を掲載する。

 同論文は、ロシア疑惑だけにとどまらず、就任以来、過去2年の間に内外に大きな波紋を投げかけてきたトランプ大統領のさまざまな尋常ならざる行状に言及した上で、三権分立、法の下の平等、言論の自由などに象徴される建国以来のアメリカン・デモクラシーを蹂躙してきたとして、大統領による「権力濫用」を止めるためには、2020年大統領選挙での審判を待つまでもなく、憲法で規定された民主的プロセスとしての「議会における弾劾」が妥当との観点に立って、その論拠を詳細にわたり展開している。

 具体的には、

  1. 歴代大統領は就任時に「公共の利益を個人の欲望より優先させる」ことを宣誓し、国全体のために奉仕する義務を果たしてきたが、トランプはその義務すら理解していないばかりか、それが当然であるかのように個人の諸利益を追求してきた。
  2. 自らの資産内容を非公開のまま、大統領の立場を利用し、米国内および外国の便乗者たちに自分の別荘地施設やホテルに対する利益供与をうながしてきた。
  3. 最初に任命したセッションズ司法長官にはロシア疑惑捜査の中止を働きかけ、FBI長官に対しては自分に対する忠誠を強要し、それに従わなかったことを理由に解任した。
  4. ロシア疑惑捜査の総括責任者であるローゼンシュタイン司法副長官とモラー特別検察官への攻撃を繰り返し、同検察官の捜査活動を邪魔し、中止に追い込もうとしたため、かえって自らを「司法妨害」容疑の捜査対象に追い込んだ。
  5. 宗教上の理由でイスラム教徒の入国阻止を命令し、メディアを「人民の敵」とみなし、批判的メディアや報道記者を大統領公式イベントから締め出した。
  6. 自らに不利な選挙結果に対しては、「買収」「集票操作」などといった根拠のない問題提起を繰り返し、与野党双方の選挙管理委員会からも批判を浴びてきた―などの例を挙げ、「これらの行為すべてが立憲民主制の土台を打ち壊すものだ」などと論じ、「弾劾論」の妥当性についてわかりやすく説明している。

 トランプ大統領の弾劾問題については、米マスコミ各紙含めこれまで慎重論が多かった。しかし、今年に入り、大統領が固執するメキシコ国境の「壁」建設推進のための予算をめぐる野党民主党との対立が深刻化、政府一部閉鎖状態による社会的混乱が長引くにつれて、マスコミのトランプ批判も一段と広がりつつある。

 今回の「アトランティック」誌の巻頭論文をきっかけに、今後、大統領弾劾論議が一層加速し、同誌の提言に同調するメディアが増えていくことも十分考えられよう。

  
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