ところが、今回の会談に臨んだトランプ氏の参謀らのうち、誰も会談決裂に対して憤る姿を見ることができなかった。ほとんど不満も表してなかった。「参謀たちは、モメンタムを活かして交渉を続けていくという意志が強かったし、早い時期に交渉再開を希望していた」(韓国の高官)。
決裂後のトランプ大統領も平気な様子だった。彼が北朝鮮の核交渉で急がない姿は、北朝鮮との"核会談"をトランプ自身の大統領選挙の再選に用いた戦略かもしれないと一部で提起している。つまり、大統領再選の当選のために非核化の談判を急がない恐れもある。
そのような意図で、トランプ大統領は以前から「急ぐことはない」と何回も話しているのかも知れない。もちろんその言葉は、交渉の成果がすぐ出ないから世論を抑えるためや金委員長を圧迫する意味もあるだろう。大統領選挙に近い時期に北朝鮮の非核化の成果を出すことができれば、大統領選挙の広報材料として、ずっと有利に使うことができるたからだ。そんな切り札を早く使う必要はないということだ。
米議会でのマイケル・
韓国の大統領府(青瓦台)の後続の構想も、大幅に修正
一方、焦る側は北朝鮮だけではないだろう。ハノイ会談が手ぶらで終わり、韓国の大統領府(青瓦台)の後続の構想も、大幅に修正せざるを得なくなった。3月末か4月初めに予想されていた金委員長のソウル答礼訪問も"視界ゼロ"になった。制裁緩和がまったく進展せず、金委員長がソウルに来ても成果を得ることが難しくなったためだ。
ある対北朝鮮消息筋は、「ハノイで米国に少なくとも南北経済協力などに対する一部の制裁の解除を受け、ソウルに来て実質的な経済協力方案を協議するのが金委員長の構想だったはずだが、すべて台無しになった」と述べた。
一部では、文大統領と金委員長の昨年5月と同じように板門店での日帰りの南北会談が再開されたり、南北首脳間の「ホットライン」が初めて稼動する可能性もあるという見方も出ている。当初、青瓦台は「ハノイ談判 → 金委員長のソウル答礼訪問 → 文大統領の訪朝」などを通じて本格的な南北経済協力に乗り出す計画だったが、相当原点から見直さなければならない状況になったのだ。
最悪の就職率と経済不況で、文大統領に対する20代の国政支持度は下がり続けている。唯一支持を得ている部分が南北関係だ。ところが、南北経済協力も国連の制裁事項の範囲内であるため、構想どおりに実行できないのだ。ジレンマに陥るのは金正恩委員長だけでなく、青瓦台も同様だ。
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